広島大ら,連星が高エネルギー粒子を撒き散らす様子を観測

広島大学や米NASAなど,日本とアメリカ他の国際共同研究グループは,銀河系で最大級の質量の連星「りゅうこつ座エータ星」を,硬X線で4年間にわたって複数回観測した(ニュースリリース)。

利用したのは,1万電子ボルト以上の硬X線を集光できる望遠鏡を初めて搭載したNuSTAR衛星。この衛星は現在唯一,硬X線での高解像度な撮像観測を行なえる。

8年前のフェルミ・ガンマ線衛星のデータ解析により,強力なガンマ線が「りゅうこつ座エータ星」付近から到来していることが分かった。そのようなガンマ線を放射するには,ほぼ光速まで加速された超高エネルギーの粒子が必要。しかしそのような粒子を作り出す極めて激しい活動現象は,「りゅうこつ座エータ星」では予期されていなかった。

フェルミ衛星はガンマ線の飛んで来る方向をさほど精度良く決められないため,近くに知られていない高エネルギー天体が隠れている可能性があった。今回のNuSTAR衛星の観測では,同じ高エネルギー粒子からの硬X線波長域での放射を見つけ,その硬X線が「りゅうこつ座エータ星」から来ていることを高い位置精度(5秒角以内,フェルミ衛星の数十倍高精度)で突き止めた。

NuSTAR衛星は更に,硬X線の強度変動を高い精度で測定(測光)できる。研究グループは「りゅうこつ座エータ星」を継続的に観測し,連星がお互いに近づくタイミングで,硬X線の強度が数ヶ月間急激に弱まる現象を発見した。これは,超高エネルギー粒子が連星間の相互作用で出来ている事を明確に示すもの。

大質量の星は,陽子や電子といった荷電粒子を,風のように高速に吹き出す。大質量星が連星を成す場合,お互いから吹き出す星風は中間で激しく衝突し,衝撃波を定常的に形成する。星風中の粒子の一部は,この衝撃波にのって加速するかもしれないと考えられてきた。今回の観測は,この機構が「りゅうこつ座エータ星」で実際に働いて粒子がほぼ光速まで加速され,星から外の宇宙空間に撒き散らされている事を明らかにした。

宇宙線は,宇宙飛行士や飛行機のパイロットの被曝の原因や,自然現象として雲の発生の要因にもなるため,どこでどのように作られるのかは重要な問題の一つ。宇宙線は陽子や電子といった荷電粒子のため,飛ぶ方向が宇宙空間に漂う磁場で曲げられてしまい,個々の粒子の飛来方向を地球で測っても,それらがもともとどの天体からやって来たのかわからない。

一方で,硬X線やガンマ線を含む電磁波は磁場の影響を受けない事から,「りゅうこつ座エータ星」が宇宙線粒子の生成箇所と特定できた。今後,「りゅうこつ座エータ星」や,これに似た連星を更に観測することで,恒星の連星が宇宙線をどれだけ作り出しているのか,また恒星の星風どうしの相互作用でどのように高エネルギー粒子の加速が行なわれるのかなどの理解が進むとしている。

キーワード:

関連記事

  • 島津製作所、JAXA基金で量子スピン磁力計の開発に参画

    島津製作所は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙戦略基金事業に採択された研究開発拠点「宇宙転用・新産業シーズ創出拠点“SX-CRANE”」に、代表機関である東京科学大の連携機関として参画する(ニュースリリース)。 S…

    2026.07.22
  • Orbital Lasers、宇宙用レーザー技術を活用した衛星LiDAR事業を紹介【光・レーザー関西2026】

    特別企画「航空・宇宙×光」ゾーンに出展しているOrbital Lasersは、宇宙用レーザー技術を活用したスペースデブリ(宇宙ごみ)除去と、衛星LiDARによる地球観測の取り組みを紹介している。 同社の技術開発は、スカパ…

    2026.07.16
  • 日本電気硝子、宇宙用超薄板カバーガラスのブランド「Starveil」を立ち上げ

    日本電気硝子(NEG)は、宇宙用超薄板カバーガラスの製品ブランド「Starveil(スターベイル)」を立ち上げたと発表した(ニュースリリース)。 Starveilは、人工衛星の太陽電池をはじめ、宇宙空間で使用される各種機…

    2026.05.25
  • 京都大学 特別教授 野田進教授

    フォトニック結晶レーザーが拓く「高輝度半導体レーザー」の次章

    半導体レーザーは小型、高効率という強みを持つ一方で、高出力化するとビームが乱れ「輝度」が伸びないという壁があった。フォトニック結晶レーザーはその常識を塗り替えつつある。その研究の先駆者である京都大学高等研究院・特別教授の…

    2026.04.02
  • 【主張】政策と技術を結ぶ日本の可能性

    世界最大の光学展示会 3月15日から米国ロサンゼルスでOFC(Optical Fiber Communication Conference and Exhibition)が開幕する。通信バブル崩壊後、存在感を失っていた同…

    2026.03.25

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア