パナソニックは7月3日,メディア向けに6月に発表したTOF方式長距離画像センサーの技術を解説する技術セミナーを行なった。
現在,自動運転を実現するセンサーとして,ミリ波レーダー,カメラ,そしてレーザーを用いるLiDARの開発が進められている。同社によればこれらには一長一短がある。特に夜間において遠方(250m先)まで人やモノを高解像度で検出する技術は無かった。
そこで同社は,アバランシェフォトダイオード(APD)による光電子倍増機能を搭載したCMOSセンサを開発した。250mという距離の計測は,光子が1つ返ってくるかどうかだが,今回,CMOSにAPDを積層することで,画素内で1つの光子を1万倍以上に増強することに成功している。これをパルス光源と組み合わせることで,遠距離のTime of Flight(TOF)による3次元距離画像の取得を可能とした。
これまでもAPDを積層したセンサーの発表はされていたが,光電変換部と蓄積部が2次元に構成されているため画素サイズは約20μm□であったが,同社が開発したセンサーはこれらを縦積とすることで画素サイズを11μm□に小型化した。これにより周辺回路部分を含めてセンサーの面積は1/2となり,TOFカメラに搭載可能なセンサーサイズと,25万画素という高解像度を両立した。
パルス光源には波長940nmの半導体レーザーを用いる。今回,10nsecのパルス幅に同期してセンサ側でも10nsecでシャッターを駆動する短パルス方式TOFを開発した。レーザーの出力は1.5kWだがパルス幅が短いため平均パワーは低く,さらに拡散させるフラッシュ方式なのでアイセーフを実現しているという。現在のフレームレートは5fpsと低いが,今後パルスの間隔を調整することで15fpsや30fpsにも対応できるとしている。
今回,APDによって戻り光量に依存せず,近距離から遠距離まで一括のTOF計測を可能にしたが,同時に遠距離の対象物に対しては確率的に戻ってくる光子の数が1つと0の場合があり,1度の計測では像がドット抜けをした粗いものになる。そのため,戻ってきた光子を積分して像を鮮明化する技術も開発,これにより,夜間において画角30°で250m先の物体を動画で捉えるデモ映像を公開した。
このセンサーは夜間での長距離検出という,これまでの技術では達成できなかった部分をピンポイントで狙ったものであるため,外乱光の多い昼間の使用は想定していないという。今後は2019年を目途にサンプル出荷を目指すとともに,2021年にはメーカーに対して提案営業を行ないたい考えだ。アプリケーションとして自動運転だけではなく,監視用途もアピールしていく。同様の技術はソニーや東芝も開発を進めており,今後が注目される。
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