九州大学,東京工業大学,豊田工業大学,物質・材料研究機構(NIMS)らの研究グループは,金属酸化物であるチタン酸ストロンチウム(SrTiO3-δ)に高濃度の酸素欠陥と電子をドープすることで,紫外光照射下における水素生成速度,酸素生成速度がそれぞれ40倍,3倍と大幅に向上することを発見した(ニュースリリース)。
太陽光を利用して水から水素を生成する光触媒は,日本人研究者を中心として研究が進められている。これまでの光触媒開発は主にトライアンドエラーによるもので,高性能光触媒を合理的に設計することが難しく,何を制御すれば高性能化できるのか十分にわかっていなかった。
電子ドープした光触媒では,励起した電子の寿命が著しく長くなる。また,電子ドープにより表面近傍の半導体におけるバンド曲がりが大きくなる。これらの影響により,反応に利用される電子・ホール数が向上し,水素・酸素生成速度が大きくなることが明らかとなった。
これらは材料科学と触媒化学の学際融合研究による成果であり,この光触媒設計指針に基づいて新規光触媒を開発することで,今後は太陽光と光触媒を利用した水素生成反応のさらなる高性能化が期待されるとしている。