九大ら,金属酸化物への電子ドープで光触媒活性が向上することを発見

九州大学,東京工業大学,豊田工業大学,物質・材料研究機構(NIMS)らの研究グループは,金属酸化物であるチタン酸ストロンチウム(SrTiO3-δ)に高濃度の酸素欠陥と電子をドープすることで,紫外光照射下における水素生成速度,酸素生成速度がそれぞれ40倍,3倍と大幅に向上することを発見した(ニュースリリース)。

太陽光を利用して水から水素を生成する光触媒は,日本人研究者を中心として研究が進められている。これまでの光触媒開発は主にトライアンドエラーによるもので,高性能光触媒を合理的に設計することが難しく,何を制御すれば高性能化できるのか十分にわかっていなかった。

電子ドープした光触媒では,励起した電子の寿命が著しく長くなる。また,電子ドープにより表面近傍の半導体におけるバンド曲がりが大きくなる。これらの影響により,反応に利用される電子・ホール数が向上し,水素・酸素生成速度が大きくなることが明らかとなった。

これらは材料科学と触媒化学の学際融合研究による成果であり,この光触媒設計指針に基づいて新規光触媒を開発することで,今後は太陽光と光触媒を利用した水素生成反応のさらなる高性能化が期待されるとしている。

その他関連ニュース

  • 神大ら,希少金属を使用せずに可視光でCO2光還元 2023年03月24日
  • 東工大ら,可視光を吸収する酸化スズを合成 2023年03月17日
  • 公大,人工光合成で低濃度CO2から生分解プラ合成 2023年03月10日
  • 岩手大,新規光触媒半導体を創製しその機構を解明 2023年02月08日
  • 立命大ら,ルテニウム錯体に光照射してCO2を還元 2023年02月03日
  • 千葉大,光触媒で二酸化炭素を燃料化する仕組み解明 2023年01月30日
  • 公大,太陽光で生分解性プラスチック原材料を合成 2023年01月12日
  • 茨城大ら,光エネルギー吸収差は水素原子1つと発見 2022年12月22日