東大,強磁場中で重い電子を発見

東京大学の研究グループは,近藤絶縁体YbB12(12ホウ化イッテルビウム)の比熱測定を60テスラまでの強磁場下で行ない,強磁場金属相の電子が通常電子の数十倍重いことを発見した(ニュースリリース)。これは,典型的な多体電子相関効果である近藤効果が強く効いていることの直接的証拠となるもの。

近藤絶縁体は,希土類(レアアース)元素を含む金属間化合物で,高温では金属だが,ある温度よりも低温になると絶縁体となる物質。その研究は1960年代から半世紀以上継続されており,最近はトポロジカル性や中性フェルミ粒子などの新概念が提案されたため再び多大な関心が寄せられているが,強い電子相関効果のために絶縁体化のメカニズムの解明は十分ではなかった。

今回,12について60テスラまでの強磁場中でその電子状態を調べた。強磁場中で比熱を精密に測定することにより,強磁場金属相では比熱が急激に大きくなることを発見し,そのことから強磁場金属相が近藤効果の強く効いた強相関金属であることを初めて直接的に証明した。比熱測定では金属中の電子の重さを測ることが可能であり,電子の重さは通常金属の数十倍であることが分かった。

また今回明らかになった磁場による比熱の増大現象は,磁気的性質の変化との整合性が極めて高いことに特徴がある。12は,金属化と同時に磁化の急激な増加が見られるが,比熱の増大率はその磁化の増大率と非常に良い一致を示した。

このことは,近藤共鳴機構によってフェルミエネルギー近傍での電子状態密度が急激に増大したためと理解でき,強磁場で現れた金属相が強相関金属であるとの説明と極めて良く整合するという。これまでに,近藤絶縁体の強磁場中の金属相が強相関金属の性質を有するという報告はあったが,、近藤共鳴現象の観点から近藤効果が実験的に確認されたのは今回が初めて。

今回の発見は,絶縁体と金属の違いは何かという古くからあるが,測定技術の進歩により実証できる新しい課題となったという点で新しい固体物理学の問題への貢献であり,近藤効果の役割に新たな理解を与えるものだという。

近藤効果は典型的な多体電子相関効果であり,非従来型超伝導やメゾスコピック系の量子ゆらぎの理解にも重要。この研究の成果はこれらを含む広範囲な物質系の理解にも大きく貢献するとしている。

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