三井金属はマイクロLEDディスプレーに適した微粒蛍光体を開発しており,試作品をJPCA Show(6月6日~8日,東京ビックサイト)にて展示している。
マイクロLEDディスプレーは,その名の通り微細なRGBのLEDを集積化したディスプレーで,有機ELディスプレーの後に来る次世代ディスプレーの最右翼ともされている。輝度が高いため有機ELディスプレーよりもさらに高いコントラスト比を得られるほか,視野角が広く消費電力も低いといった特長があると言われている。しかし,現状はRGBのLEDを高密度に実装するのが困難で,家庭用テレビとなるような製品はまだ実現していない。
そのため,マイクロLEDディスプレーを実現する技術としてRGB LEDの高密度実装以外の方法も検討されている。その例として,LEDを全て青色,もしくはUVとすることで実装の難易度を下げ,その上から青色光やUV光を赤色光や緑色光に変換する蛍光体を置く方法や,全て白色LEDを実装し,その上にカラーフィルタを置く方法などが候補となっている。
今回同社が展示しているのは,青色光を赤色光もしくは緑色光に変換する蛍光体。従来液晶パネルのバックライトに使われていた技術を応用したもので,硫化物を材料とする。オキサイド(青色光→緑色光)やナイトライド(青色光→赤色光)を用いた蛍光体に比べて半値幅が狭く,色純度が高い光を得られるのが特長となっている。
量子ドットと比べると色域はやや狭いながらも,カドミウムといった毒性の問題が無いほか,量子ドットは粒径が小さく(5nm程度),粒子同士の隙間から青色光が漏れるのでカラーフィルターが必要になるが,この蛍光体は粒子径が3~4µmと大きく,青色光が漏れる心配もない。
さらに,液晶パネルでは人間の目が認識しずらい緑の画素を多く配置する必要があるが,この蛍光体は変換効率が高いので,明るい緑の画素を得ることができるなどのメリットがある。また,寿命についても耐久試験(120°,100RH%,16h)において,吸収率や量子効率が劣化しないことを確認している。
同社ではディスプレーメーカーに対して試作品の提供を開始しており,色域などについてまずまずの評価を得ているという。この蛍光体をディスプレーメーカーがどのようにLED上に配置しているかは不明だとしながらも,粒径が大きいことからインクジェットでの吹付は難しいため,「何らかの方法で塗布しているのでないか」(説明員)と推測している。