NHK放送術研究所(技研)では,来るべき8K時代に必要な技術としてフレキシブル有機ELディスプレーの研究を続けているが,今回,長寿命のフィルム基板デバイスを開発し,NHK技研公開2018にて公開した。
技研では8Kの視聴方法として,100インチのテレビを1mの距離から視聴することで,より高い没入感を得ることを想定している。ただし,このサイズのテレビを一般家庭で設置することは現実的でないことから,100インチのフレキシブルディスプレーをロールスクリーン状にして視聴時のみ降ろすという方法を模索している。
実際には8Kディスプレーの小型化が進んでおり,シャープからは70インチの8Kテレビが発売されるなど,8Kを100インチで視聴するというNHKの提案するスタイルは有名無実化しつつあるが,フレキシブルディスプレーはその他の分野でも期待されていることもあってか研究は継続している。
開発する有機ELフレキシブルディスプレーは,陰極を下層に配置し,その上に電子注入層,発光層,陽極と積み上げる逆構造を採用している。これにより,日本触媒と開発した酸素や水分に強い電子注入層を,フィルム基板から侵入した水分や酸素が発光層に入り込むのを防ぐ「バリア」として利用することで,長寿命を実現できる。
技研では有機EL関連の開発としてBT.2020を目指す高色純度有機EL材料や周辺デバイスの開発も行なっており,昨年にはガラス基板とガラス封止により,光取出し効率に有利な順構造で緑色の高色純度有機EL材料による発光デモを行なっている。今年はフレキシブルディスプレーに適した逆構造として,ガラス基板と封止フィルムの組合せでRGBの発光を展示したほか,フィルム基板による緑色のフレキブルデバイスを展示し,研究の進捗を示した。