産業技術総合研究所(産総研)と名古屋大学は共同で,ラマンマッピング像から窒化ガリウム(GaN)半導体結晶の欠陥を検出する技術を開発した(ニュースリリース)。
次世代パワーデバイスや高輝度発光デバイスとして期待され,研究開発が盛んに進められているGaN半導体の更なる高性能化・高寿命化のためには,欠陥の少ない単結晶GaN基板が必要となる。GaN半導体単結晶の構造欠陥である転位を検出するために,簡便で非破壊の転位検出技術が求められていた。
今回開発した欠陥検出技術は,ラマン散乱を応用した技術。GaNのラマン散乱スペクトルでは,結晶にひずみがあると,圧縮ひずみでは高波数側,引張ひずみでは低波数側にピークがシフトする。
最も強度の大きいE2Hラマン散乱ピークについて,実験で得られた生データを解析モデルによる数値フィッティングをすることで0.1cm-1の波数分解能でGaN結晶のピークシフトを観測し,わずかなひずみの検出を試みた(従来,測定検出器の波数分解能が0.8cm-1であり,1cm-1以上のピークシフトを観測していた)。
今回開発したラマンマッピング法の測定結果と,従来,GaN基板の欠陥評価法として使用されてきた水酸化カリウム溶液によるエッチピット法による結果とを比較した結果,エッチピットと同一箇所に明瞭なコントラストが観察された。
今回,開発したラマン散乱を利用した手法によりGaN結晶の刃状転位や混合転位の分布や方向を簡便に非破壊で測定できた。今回開発した結晶の欠陥検出技術を利用してGaNや他の半導体の高品質化に繋げる取り組みを実施する。