徳島大ら,共焦点顕微鏡の高速化に光コムで成功

徳島大学,宇都宮大学,電気通信大学らの共同研究グループは,光位相と光振幅に基づいた共焦点顕微鏡画像をリアルタイムで計測する技術の開発に成功した(ニュースリリース)。

共焦点顕微鏡は,1μm前後の空間分解能で3次元イメージングが可能だが,光強度に基づいて画像化するため,測定対象は反射性,散乱性,吸収性,または蛍光性である必要があり,透明な細胞の観察には蛍光ラベリングが必要となる。また,半導体部品の品質評価ではnmオーダーの表面欠陥検出が必要とされており,品質評価に利用することができなかった。

もし光強度の代わりに光位相で画像化できれば,屈折率,光学厚さ,幾何形状の情報を高精度に取得できるので,透明・非蛍光性サンプルやナノメートル凹凸サンプルの計測が可能になる。これまでにも,点計測に基づいた光位相の共焦点顕微画像の取得は可能だったが,焦点位置のスキャンに時間を要するため,画像を高速取得することは困難だった。

研究では,共焦点顕微鏡の新しい光源として光コムに着目。光コムを「超離散マルチ光チャンネル」と見立て,波長・空間変換により光コムモードを2次元空間に展開して,対物レンズで2次元焦点群としてサンプルに照射すると,サンプルのイメージ情報を光コムモードのスペクトルに転写させることが可能となる。

サンプルから反射された2次元焦点群(光コムモード群)は,空間・波長変換によって再び空間的に重ね合わされた後,検出器側ピンホールを通過する。その結果,サンプルのイメージ画素と光コムモードを1対1対応させるとともに,2次元焦点群に共焦点効果を並列で与えることが可能になる。

このイメージ転写光コムをデュアルコム分光法で計測することにより,個々の光コムモードがスペクトル分解された振幅スペクトルと位相スペクトルを高速に取得。イメージ画素と光コムモードの1対1対応関係に基づいて画像を再構成することにより,共焦点位相イメージと共焦点振幅イメージを高速に一括取得(最大で毎秒1,234イメージ)することができる。

透明・非蛍光性サンプルとしてホルマリン固定された線維芽細胞を光コム顕微鏡で計測したところ,従来の位相差顕微鏡に対し,共焦点性により特定の深さにおける光位相情報を選択的に定量値として得ることが可能で,立体的に培養された細胞サンプルの3次元分布を定量的に品質評価できた。

次に,金コートされたnm凹凸のサンプルを計測したところ,nm段差が位相変化量として,明確に可視化され,それぞれの段差はの値は原子間力顕微鏡で測定した値と1パーセント以下の誤差で一致した。

培養細胞の非染色で非侵襲な3次元イメージングが可能になると,細胞の品質検査を行ないながら培養することが可能になる。また,1μm前後の共焦点深さ分解能と,nmオーダーの位相深さ分解能により,nm〜mmに及ぶワイドレンジな表面欠陥評価が可能になり,半導体,ナノ材料,金属,高分子の特性評価にも有用だとしている。

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