物質・材料研究機構 (NIMS) は,窒化ガリウム (GaN)半導体の直径2インチウエハ結晶面の「ゆがみ」を,ウエハ全面を一度に,しかも数10マイクロメートルの空間分解能で可視化する新たな評価手法を開発した(ニュースリリース)。
GaNは,高耐圧性・省電力性などの特長により,電気自動車のモーターなどの駆動制御部品や,高速通信5G (第5世代移動通信システム)向けの高周波デバイスへの応用が期待されている。
そのデバイス性能は,GaN結晶の欠陥の数によって大きく左右されるが,従来のX線回折を用いた結晶面の評価方法では,詳細に評価するためには,ビームサイズを小さくする必要があるため,ウエハ全面の測定に時間がかかる欠点があった。また,ウエハ全面にX線を照射し,結晶面を一度に測定する方法では,結晶面の方向など詳細な情報は得られなかった。
研究グループは,ウエハ前面にX線を照射する手法を改良し,従来は1方向からのみのX線の回折強度を測定していた方法から,ウエハを回転させ2方向以上の回折強度を取得し,数学的に解析する手法を開発した。これにより結晶面の各部位の法線を試料表面内の角度成分を求めることができ,各部位の結晶面の法線の,試料表面にほぼ平行な理想的な面への投影を得ることができる。
この手法を用いることで,結晶面全面の「ゆがみ」の方向と大きさを,一度に定量的に可視化することに成功した。実際に大型放射光施設(SPring-8)のシンクロトロンX線を用いて直径2インチのウエハを評価した結果,結晶面の形状を約30分で評価することができたという。
この手法は,対象とする半導体の種類を限定しないため,GaN以外の様々な半導体ウエハの評価への応用が期待できるとしている。