東芝は,「LiDAR」において,長距離測定の信頼性を向上させる計測ロジック技術を開発した(ニュースリリース)。
高度な自動運転システムの実現に必要なLiDARには,長距離を高精度に検知する性能が求められる。長距離を測定するには,強い太陽光の存在下でも,微弱なレーザーの反射光を検知する必要があり,太陽光などのノイズを小さくするための平均化処理が用いられている。しかし,従来の平均化処理では,複数の異なる物体からレーザー光が反射してくる場合,解像度が劣化してしまうという問題があった。
またLiDARは測定可能な距離に物体が無い場合,ノイズに基づいた結果を出力し,誤検出を引き起こす。そのため,誤検出の除去が必要だが,平均化処理を行なった結果には,距離のクラスタリングと呼ばれる特有の現象が発生し,従来の誤検出除去では,遠距離対象からの正しい検知データも除去してしまうという問題があった。
同社は,独自の計測回路技術と高解像度測距技術を開発し,その併用により,長距離にある物体を高い解像度で検知することに成功している。一方,高解像度測距技術においては,距離のクラスタリングによる影響の低減に,さらなる改善の余地があった。
今回同社は,クラスタの大きさと信号の強さから,出力された距離データの確からしさを関係式で表現できることを発見した。そして,同関係式に基づいて回路内のパラメーターを調節することで,距離のクラスタリングの発生を抑制しながら誤検出を排除するアルゴリズムを確立した。
この誤検出を排除するアルゴリズムは,小面積・低消費電力の集積回路として実現することが可能。同社の計測回路技術を併用することで,従来の約1.8倍の測定距離を実現しつつ,誤検出を低く抑えることに成功した。これにより,高速走行中の車両や障害物の早期検知,市街地走行中における歩行者の見落とし低減を実現するとしている。
なお同社は,LiDARシステム向けの半導体として,高感度な集積型光センサSilicon Photo-Multiplier(SiPM)の開発を進めており,今回発表技術を搭載した計測LSIと併せて,自動運転システム向けLiDARの普及に向けた取り組みを強化すると共に,この技術の2020年までの実用化を目指す。