理化学研究所(理研),東レ,東京大学,米カリフォルニア大学サンタバーバラ校,早稲田大学らの研究グループは,耐熱性と高いエネルギー変換効率を兼ね備えた「超薄型有機太陽電池」の開発に成功した(ニュースリリース)。
柔軟性の高い太陽電池は,ウェアラブルセンサーおよび電子デバイスを実現するための電源として期待を集めている。こうした機能を持つ太陽電池を衣服などへ貼り付けることで,e-テキスタイルなどに搭載されたウェアラブルなセンサーが実現可能する。理研ではこれまでに,伸縮性と耐水性を両立した「超薄型の有機太陽電池」を報告してきた。
しかし,これまでの超薄型有機太陽電池では,十分なエネルギー変換効率と耐熱性を両立することは難しいため,高温下での駆動や熱を伴う加工プロセスへの適応が妨げられていた。
研究グループは,基板から封止膜までの全てを合わせた膜厚が3μmという極薄でありながら,エネルギー変換効率10%を達成し,100℃の加熱でも素子劣化が無視できる高い耐熱性を持つ有機薄膜太陽電池を開発した。大気環境中で80日保管後の性能劣化も20%以下に抑え,「ホットメルト手法」を利用した衣服への直接貼り付けを可能にした。
この技術は,衣服貼り付け型の太陽電池を容易に実現できるだけでなく,加熱を伴う過程にも耐えうるフレキシブルな電源となる。これにより,車内などの高温・多湿環境下でも安定して駆動する軽量な電源の実現が期待できる。
また,この研究で実現した高耐熱・高エネルギー変換効率の超薄型有機太陽電池は,ウェアラブルデバイスやe-テキスタイルに向けた長期安定電源応用の未来に大きく貢献するとしている。