英調査会社IHS Markitは,「没入型コンピューティング ― コンシューマ向けAR・VRレポート」をまとめ,一般消費者向けARおよびVRコンテンツ・アプリのグローバル市場は2017年,前年比72%増の32億ドルに成長したと発表した(ニュースリリース)。
VRと比べてARはより幅広く多様なコンテンツやアプリケーションに対応しているため,一般消費者向け市場はVRより有利な位置付けにある。スマートフォンが主導するARは莫大な数の利用者に対応する可能性を持つが,ハンドヘルドの小型スクリーンという限定的な使用シーンのため,市場規模はある程度相殺される。それでも,向こう5年間のAR市場全体の潜在性はVRをはるかに上回るとしている。
一般消費者向けVR市場は依然,比較的ニッチだが,今後数年間はヘッドセットの採用が徐々に拡大する状況が続くと見る。ハードウェア価格の下落,技術の進化,コンテンツの魅力拡大などがその要因となる。しかし,現時点ではハイエンドPCやコンソール型VRヘッドセットの採用が限られているため,消費者に直接コンテンツを販売する独立型VRコンテンツ企業にとっては,投資の回収がまだ難しい。
AR/VRハードウェアは今後数年間,AR技術の消費者利用はスマートフォンによる独占状態が続くとし,ARヘッドセットは進化しているが,スポーツ用のトレーニングやドローン飛行のようなニッチなアプリケーションに特化し,一般利用される端末にまでは至らないと見ている。
一般消費者向けVRヘッドセット市場は引き続き成長するが,比較的ゆっくりしたペースになる。2017年時点では,ハイエンドVRヘッドセットの採用は装置コストの高さと目立ったコンテンツの不足に阻まれた形となった一方,スマートフォンベースの分野のポテンシャルもGoogleの新しいDaydreamプラットフォームの対応が限定的だったことで下振れした。また,スマートフォンメーカーも,ハイエンド製品を売る際にVRヘッドセットではなく画面やカメラなど他の技術や機能をセールスポイントにした年でもあった。
コンシューマ向けVRヘッドセットのインストールベースは2017年末時点では世界全体で2800万だったが,2021年には7570万に増加する。VRヘッドセット向けの消費者支出は2017年には24億ドルに到達,2021年にはこれが59億ドルまで増加すると予測する。消費者支出の総額はPCやコンソール,スタンドアロン型ヘッドセットの採用継続にけん引されて増加するが,ヘッドセット価格の下落に相殺される形になるとしている。