首都大ら,クロロフィルから円偏光発光を発見

首都大学東京,近畿大学,北里大学の共同研究グループは,植物の光合成において重要な役割を果たすクロロフィルが重なり合う特徴的な構造「スペシャルペア」をモデルにした色素を作成して測定したところ,円偏光発光(CPL)していることを確認した(ニュースリリース)。

人工光合成の実現には,植物が行っている光合成を正確に理解することが不可欠であると考えられている。光合成には,様々な生体分子が関与しているが,葉緑素の中に含まれているクロロフィルは,二分子が至近距離で積み重なったような集合体を形成している。この集合体は「スペシャルペア」と呼ばれており,これまでの研究から,「スペシャルペア」は光学活性な構造をしていることが明らかになっている。

一方,円偏光発光(CPL: Circularly Polarized Luminescence)は,高輝度液晶ディスプレー用偏光光源を始めとして,3次元ディスプレーや光通信,セキュリティ分野などへの応用が期待されており,効率良くCPLを発するキラル有機蛍光色素の開発に関する研究は,近年大きな注目を集めている。

研究では,「スペシャルペア」が光学活性体であることに注目し,この集合体がCPLを示すのではないかと予測した。キラル有機蛍光色素の開発には多大な労力が費やされているが,もし,天然由来の色素がCPLを示すのであれば,効率良く機能性光材料の開発が行なえる可能性がある。

そこで,「スペシャルペア」のCPLの測定を計画したが,「スペシャルペア」は弱い相互作用によって形成されおり,その取り扱いは極めて難しい。そこで研究グループは,クロロフィルの母骨格であるポルフィリンと呼ばれる分子を用い,これを化学結合で連結させた安定な分子を設計した。有機合成化学の手法を用いてこの分子を合成し,光学活性体を得た。

これについてCPLの測定を行なったところ,予想通り,CPLを観察することに成功した。しかも,赤色の発光を示し,既存の色素では得ることが難しいとされる光の領域だった。もし,この研究で得られた色素を使って素子開発に成功できれば,将来,既報の緑色,青色のCPLを示す色素と組み合わせて総天然色を表現することも可能になる。

この研究では,植物の光合成から,光学活性なポルフィリン二量体を合成し,CPL発光を観察することに成功した。この知見を元にすることで,新しいCPL色素の開発に拍車がかかるとともに,分子の光学活性の観点から光合成のメカニズムについて改めて考えてみる良い機会を提供できたとしている。

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