九州大学の研究グループは,超高速「モード選択」光源を世界で初めて実現した(ニュースリリース)。
スーパーコンピュータなどの情報処理装置内の配線速度は,AIやビッグデータ解析などを背景に増加の一途をたどり,近い将来毎秒1テラビットを超える超高速の配線速度が必要になると予想されている。
電気信号のままではテラビット超級の配線速度実現は困難であるため,半導体レーザー光と光導波路を用いた光配線技術が注目されているが,従来の半導体レーザーの直接変調速度はその物理的制約から最高でも毎秒50ギガにとどまっており,発振波長の異なる半導体レーザー光を複数個集積し並行信号処理をせざるを得ず,異なる発振波長の半導体レーザーを複数集積するうえに,波長を合波するための光集積回路等も必要となり,小型IT機器への搭載が困難といった課題があった。
研究グループは,単一の半導体レーザーでありながら,“空間モード”を自由に選択発振でき,かつ,それぞれの空間モードを超高速変調することのできるレーザー光源を実現し,その基本動作実証に世界で初めて成功した。
この半導体レーザーは,従来の光通信用半導体レーザーとは異なり,世界に先駆けて見出したアクティブMMI(能動光多モード)現象を適用し,光の干渉効果を利用することにより,単一の半導体レーザー素子でありながら,複数の空間モードを選択的に発振させることができる。加えて,このアクティブMMI現象を利用すると,複数の光干渉経路による生じるフォトン・フォトン共振を複数生じさせることが出来,結果として100GHz以上の周波数応答特性実現が期待できるという。
10以上の異なる空間モードを100GHz以上の周波数応答で動作させることができれば将来は,テラビット超級光源が実現できることになる。今回の発表では,2つの空間モードそれぞれに対して40GHz以上の周波数応答特性を有するモード選択光源を実現している。今回の発明により,半導体レーザー1素子のみで現在と比べ10倍以上の光配線速度であるテラビット超級の実現が期待できる。
今回の発表は評価装置の制約から,基本実証として2つのモード間の40GHz超の高速周波数応答特性を実験的に実証したが,実際には各モードに対して100GHzクラスの高速周波数応答が得られていると予想する。今後はモード選択数を10以上とする等により,単一素子で毎秒1テラビットを送信することのできる半導体レーザー実現が期待でき,小型IT機器への超高速光配線技術が波及することで,AI・ビッグデータ解析等の更なる進展への寄与が期待されるとしている。