東京大学の研究グループは,高分解能電子顕微鏡を駆使して有機金属ハライドペロブスカイト太陽電池の結晶相のナノ構造微細観察を詳細に進めた結果,従来,室温では正方晶(Tetragonal)しか存在しないと思われていた有機金属ハライドペロブスカイト太陽電池の結晶相に立方晶(Cubic)と正方晶(Tetragonal)が共存していることを発見した(ニュースリリース)。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は,2014年9月に「太陽光発電開発戦略」を策定し,発電コスト低減目標として,2020年に14円/kWh、2030年に7円/kWhを掲げている。
東京大学では,この目標に向けて2015年よりNEDOの研究開発プロジェクト「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発/革新的新構造太陽電池の研究開発/ペロブスカイト系革新的低製造コスト太陽電池の研究開発」を受託し,高性能と高信頼性を両立したペロブスカイト太陽電池の開発を進めてきた。
ペロブスカイト太陽電池は日本発の太陽電池で,塗布製造できることが大きな特徴であり,既存の太陽電池に比べて大幅なコストダウンが期待できるうえ,最近では22.7%の高い変換効率も報告されている。
ペロブスカイト太陽電池の更なる高効率化には,発電機構解明やペロブスカイト結晶の構造を詳細に明らかにするなどの基礎研究が欠かせない。しかしながらこれまで結晶構造に関する詳細な報告はなされてこなかった。
今回研究グループは更に,この立方晶(Cubic)と正方晶(Tetragonal)は,塗布しただけで自発的に規則正しく交互に規則配列した超格子構造(Superlattice)になっていることを世界で初めて確認した。
効率20%を越える有機金属ハライドペロブスカイト太陽電池の中身が,実は結晶構造の異なる(即ち格子サイズや光学特性の異なる)結晶相の混合状態になっているというのは従来の常識を覆す驚きの発見。
また,基板に塗布しただけで,その一部が自発的に超格子構造を取ることも大きな発見。今後,結晶工学的な立場から相のコントロールを試みることで更なる高効率化が期待されるとしている。