NTTは光音響技術を用いたウェアラブル血糖値センサーをNTT R&D 2018にて展示した(技術概要)。
食生活の変化に伴い糖尿病もしくはその予備軍となる人が増えている。その管理には血糖値を知ることが第一歩となるが,現在,血糖値を図るためには採血が必要なため痛みを伴うほか,通院が必要といったQOLを損ねる要素が多いことが問題であった。
NTTでは通信用レーザーを扱ってきた知見を活かし,レーザーを用いた血糖値計の開発を行なっている。これは耳たぶからレーザー光を体内に照射し,体内で発生した超音波を検出することで血糖値を測るというもの。一日中装着が可能な補聴器タイプのウェアラブル機器をイメージしている。
光音響は以前から知られた技術であるが,S/N比を取りにくいという問題があって実用化されてこなかった。NTTは今回,レーザー光を入れた耳たぶの中で超音波を増幅させる技術を開発したことにより,実用化への目途を付けた。
レーザーは通信波長帯である1.6μm帯(出力数mW)を用いるが,この波長帯は体内への透過性が低く,そのまま透過光を用いた計測はできない。この装置のレーザーの周波数は400kHzで,これにより血液中のグルコース(ブドウ糖)の熱膨張と収縮を繰り返させて,同じ周波数の超音波を発生させる。
グルコースの濃度により超音波の音圧が変化するので,これを計測して血糖値を測ることができるという。模擬血液を用いた実験では市販されていると同程度の精度を確認している。今後は大学病院と連携して人を使った研究を予定しているが,NTTではまず,健常者が気軽に一日の血糖値の変化を測れるウェアラブルなヘルスケア機器への応用を目指す。