QST,中赤外レーザーによる非侵襲血糖測定技術を開発

量子科学技術研究開発機構(QST)は,高輝度中赤外レーザー(波長:6μm〜9μm)を用いた,採血なしで血糖値を測定する技術(非侵襲血糖測定技術)の開発に成功した(ニュースリリース)。

採血なしに血糖値を測定する技術(非侵襲血糖測定技術)の開発は、可視や近赤外光等を用いてこれまで20年以上にわたり行なわれ,一部では既に製品化を目指した開発も行なわれているが,糖以外の各種の血液中の成分(タンパク質,脂質等)や環境条件(体温等)の影響を大きく受けるため,臨床応用に必要とされる十分な測定精度を得ることはできていない。

一方,皮下に挿入した専用のセンサーを用いて,微侵襲,非観血的に間質液中のグルコース濃度を連続的に記録する持続血糖値センサー(CGM)が,医師の指導の下,糖尿病患者の日常の診断に用いられている。しかしながら,一般的なCGMは間質液中のグルコース濃度と血糖値との間にはタイムラグが生じるため,アルゴリズムを用いてこれを解消するために採血による日々のキャリブレーションが必要となる。

これらに対して,中赤外領域を用いると,特定の物質のみに選択的に光エネルギーを吸収させることができるため,比較的容易にグルコースの吸収を計測することが可能となる。しかし,セラミックヒーターなどの従来光源は,中赤外領域での輝度が極端に低いため,血糖測定に必要とされる十分な精度が得られなかった。

QSTの研究グループは,固体レーザーの最先端技術と光パラメトリック発振(OPO)技術を融合することにより,世界で初めて手のひらサイズの高輝度中赤外レーザーの開発に成功し,一定の条件の下,国際標準化機構(ISO)が定める測定精度(血糖値75mg/dl未満では±15mg/dl以内,75mg/dl以上では±20%以内に測定値の95%以上が入っていれば合格)を満たす非侵襲血糖測定技術を初めて確立した。

今回,この最先端レーザーをコア技術としたQST発第1号ベンチャー,ライトタッチテクノロジー株式会社を設立した。同社は平成29年7月5日にQSTベンチャー第1号として認定され,7月10日に正式に設立された。

今後,大学病院等で糖尿病患者を含めた臨床研究を実施し,POC(proof of concept)取得を目指す。このPOC取得により,ヘルスケア,医療機器メーカーとの協業を進め,治験,薬機法承認を経て,病院から一般家庭まで広く普及できる小型の非侵襲血糖値センサーを事業展開させることで,糖尿病患者のQOL向上が期待されるとしている。

同社の設立は,文部科学省の大学発新産業創出拠点プロジェクト(START)の成果の活用でもあり,今後同社は,QSTが得意とする最先端レーザーをコア技術とした非侵襲血糖値センサーを事業展開し,QSTでの研究成果の社会還元を目指す。

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