北海道大学,名古屋大学,豊田中央研究所らは共同研究で,雑音(ノイズ)によって微弱な信号に対する感度が高まるという,直感に反する現象「確率共鳴」を説明する新たなメカニズムを発見した(ニュースリリース)。
話し相手の声を聞き取りにくくする騒音のように,不規則で耳障りな雑音(ノイズ)は捉えたい信号をかき消してしまう。ところが,生物にとっては雑音があるほうが敵を敏感に察知しやすいなど,雑音により感覚器の感度が高まることが知られている。直感に反するこの現象は確率共
鳴と呼ばれている。
電子工学をはじめとして様々な分野で雑音が問題になっている中で,雑音を利用することができるこの現象は工学的な利用価値が高いと考えられている。1981年に現象が報告されて以来,工学的応用のために原理の本質的解明が望まれてきましたが,誰もが納得できる十分な理解はまだ得られていなかった。
今回研究グループは,非線形系の一つである双安定系において,感度と雑音の関係を導き出した。また,自然界に広く存在し,最も標準的な雑音である白色ガウス雑音の場合,雑音を特徴付けるガウス分布の裾において相対変化率が無限大に発散するという特異な性質があり,これが起源となりガウス雑音を信号に加えることで感度が増大することをつきとめた。この理論は,シュミットトリガと呼ばれる双安定電子素子を用いて実験的にも確認された。
この成果により,雑音を除去せずに小さな信号を扱えるようになることから,様々な電子機器の小型化や低消費電力化につながることが期待できるという。また,ガウス雑音の性質は自然界や社会の多くの現象に関連していることから,この研究成果が電子工学のみならず自然・社会のゆらぎと非線形が関与する諸現象の理解に貢献することも期待されるとしている。