京大ら,高分子のらせん構造を自在に操ることに成功

著者: sugi

京都大学,東京大学,仏ラウエ・ランジュバン研究所は共同で,中性子小角散乱実験と計算科学的手法を組み合わせることで,高分子のらせん構造の右巻き,左巻き構造が溶媒によって自在に変化するという現象の原理解明に成功した(ニュースリリース)。

らせん構造は最も広く存在する規則構造で,生体内に存在するDNAやタンパク質といった生体高分子にもらせん構造は数多く存在し,遺伝情報の記録や複製,生体内での酵素反応など様々な機能を発現するために重要な役割を果たしている。

一般にこれら生体高分子のらせん構造は,左巻きあるいは右巻きのどちらかに定まっている。たとえば,DNAの二重らせん構造や,タンパク質を構成するαヘリックス構造は右巻き構造をとっており,右巻き左巻きが入れ替わることはほとんどない。

一方で合成繊維やプラスチックに代表される合成高分子では,溶解させる溶媒の種類によってらせん構造が右巻き/左巻きと反転する場合があることが明らかにされつつある。しかし溶媒の種類によって,なぜらせん構造が反転するのかという原理については全く明らかになっておらず,新たな機能性材料開発に向けて大きな課題となっていた。

研究グループは,世界で最も鋭敏にらせん反転を示すポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)という高分子を対象として選び,中性子ビームを用いてその散乱パターンを測定する中性子小角散乱という手法と計算科学的手法を組み合わせて解析した。

その結果,高分子の側鎖が主鎖に沿ってコンパクトに縮まっている場合には左巻き構造をとり,溶媒と側鎖の相互作用によって大きく広がった場合には右巻き構造をとることを初めて明らかにした。この原理を用いることで,高分子の左右らせん構造を,溶媒のような外部の環境によって自在に操ることが可能となった。

今回解明した原理に基づいて設計することで,光学活性医薬品等の製造プロセスに革新をもたらす可能性がある。さらに,円偏光スイッチング型液晶材料や刺激応答型円偏光発光材料等の従来困難であった新材料の創出にも直結している。

研究グループは,将来的にこの研究を通じて,生体高分子の持つらせん構造の持つ意味を本質的に理解することで,新たな生体機能性材料の開発に繋がるとしている。

キーワード:

関連記事

  • 熊本大、円偏光発光を示すキラルな無機結晶を発見

    熊本大学の研究グループは、無機バルク結晶として円偏光発光(CPL)を示すキラルカリウムユウロピウム塩を発見した(ニュースリリース)。 カリウムとランタノイドからなる硝酸塩K3[Ln2(NO3)9](Ln:ランタノイドイオ…

    2026.01.15
  • 東北大ら、円偏光を用いた共鳴非弾性X線散乱による磁区識別法を開発

    東北大学、早稲田大学、大阪公立大学は、円偏光を用いた共鳴非弾性X線散乱(RIXS)による新たな磁区識別法を開発した(ニュースリリース)。 交替磁性体は全体としての磁化がゼロでありながら、スピンの分極した電子バンドを持つた…

    2025.11.26
  • 京大,光で分解可能な高分子を開発

    京都大学の研究グループは,配列制御ラジカル共重合と重合後修飾反応によってケトンのカルボニル基が周期的に導入された高分子の合成手法を開発した(ニュースリリース)。 プラスチックやゴムとして用いられる高分子は,安定な材料とし…

    2025.10.22
  • 九大,液晶と高分子の複合材料で生じる特性を解析

    九州大学の研究グループは,高分子ネットワーク液晶に電圧を加えて流れを起こす実験を行ない,液晶が高分子の細かい網目構造に閉じ込められると,電圧をかけたときに現れる流れの模様がゆがみ,動きが遅くなる,さらに電流が流れにくくな…

    2025.10.10
  • 近畿大ら,高圧環境下での円偏光発光の計測に成功

    近畿大学と日本分光は,静水圧(100MPa)という高圧環境下での円偏光発光の計測に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。 特定の方向に振動する光を偏光といい,中でも円偏光はらせん状に回転する特殊な光で,次世代のセンシ…

    2025.09.16
  • 阪大ら,新たなキラル対称性の破れ現象を発見

    大阪大学と大阪公立大学は,キラルなフェノチアジン誘導体のアキラル結晶が,分子のキラリティを反転しつつ単結晶性を維持したままキラル結晶へ構造転移する現象を発見した(ニュースリリース)。 キラル化合物は通常,鏡像の関係にある…

    2025.08.21
  • 近大ら,液晶材料で円偏光の発生と回転方向高速切替

    近畿大学と立命館大学は,アキラル(光学不活性)な発光体を,性質の異なる2種類の液晶材料に添加することにより,らせん状に回転しながら振動する円偏光を発生させ,加える電場の方向を連続的に切り替えることで,円偏光の回転方向を高…

    2025.07.18
  • 北大,光の回転が物質を動かす仕組みを解明

    北海道大学の研究グループは,光が物質に与える,回転の力(光トルク)の源である角運動量を,スピンと軌道の二つに分け,それぞれの損失量を個別に測定・解析できる新たな理論を提案した(ニュースリリース)。 光には,まっすぐ進むだ…

    2025.06.10

新着ニュース

人気記事

新着記事

  • オプトキャリア