芝浦工業大学と北海道大学の研究グループは,構造物の損傷を非接触で高精度に検知するシステムを開発した(ニュースリリース)。
薄板構造物に伝播する弾性波の1つであるLamb波は,減衰が小さく長距離伝播するという特徴がある。そのため,航空機のような大型構造物に対する広域損傷検知を実現するために多くの研究がなされてきた。
Lamb波の生成法としては,圧電デバイスなどによる接触式,またはレーザー熱弾性などによる非接触式などがある。これらの手法は,検査対象が液体中であったり,高温下であったりすると,その適用が難しくなるという問題があった。
今回の手法では,レーザーアブレーション(Laser Ablation: LA,表面にレーザー光を照射するとプラズマが発生し,固体表面の構成物質が爆発的に放出される現象)により非接触でインパルス加振力を生成できる技術を利用することで,水中などのあらゆる場所でも検査対象にLamb波を生成できる。
このシステムを用いることで,理論値とほぼ同じLamb波を生成することに成功した。ジュラルミン平板に伝播するLamb波をレーザードップラー振動計により可視化し,その伝播を観察することで,人工的に設けた貫通亀裂を検知することにも成功した。
LAにより生成されたLamb波の振幅は,従来のものと比べ同等以上であることから,優れた信号雑音比となる。そのため,計測における平均化回数を低減でき,短時間での検査を実現できる。ただし現在のところ,LAでは,対象構造物に小さなクレーターが生成されてしまう課題があるという。
研究グループは今後,完全に非接触非破壊で,大型構造物の損傷検知を短時間で実現できるシステムの構築を目指すとしている。