東京大学,九州大学,早稲田大学,米ハワイ大学の研究グループは,大規模なゲノムデータ解析により,海洋表層に生息する細菌には光からエネルギーを得る「太陽電池型」と色素で光を遮る「日傘型」の適応戦略があることを発見した(ニュースリリース)。
海洋表層に生息する細菌の約半数はプロテオロドプシン(PR)と呼ばれる光受容体を持つ。PRは光からエネルギーを受け取る「太陽電池」のような役割を持ち,細菌の海洋表層への適応に大きく貢献していると考えられている。
では,そもそもなぜ,そのように重要な光受容体であるPRを持つ細菌と持たない細菌がいるのか。研究グループは,大規模なゲノムデータ解析を行ない,海洋表層に生息する細菌には光からエネルギーを得る「太陽電池型」と色素で光を遮る「日傘型」の適応戦略があることを発見した。
すなわち,太陽からの莫大な光エネルギーにさらされる海洋表層の細菌は,ただその恩恵を受けるだけではなく,「光を利用するか,光を避けるか」という“究極の選択”を迫られていることになる。
この研究により,地球表面の7割を占める海洋表層に生息する膨大な細菌の基本生存戦略の理解が進むとともに,「光」が生物の設計図であるゲノムの大きさを決めるというゲノム進化メカニズムを提唱した。