東北大学と産業技術総合研究所は共同で,気相脱合金法を用いたナノポーラス合金の新しい作製手法を開発した(ニュースリリース)。
大きい比表面積,高い導電率,および高い熱伝導率を示す三次元のネットワーク状のナノポーラス構造を有するナノポーラス合金は,触媒,エネルギー貯蔵,およびエネルギー変換などに幅広く使用され,表面増強ラマン散乱分光法にも利用されている。
開発した方法は合金は真空環境下で加熱した際,合金中の各元素の蒸気圧が異なることを利用した。蒸気圧がより高い元素が合金から容易に蒸発し,蒸気圧がより低い元素が原子拡散によってナノポーラス構造を形成する。この方法は従来の電気化学的脱合金法と比較して,化学エッチングを使わずにナノポーラス合金を作製でき,蒸発した元素を完全に回収することができる。
このようにこの手法は無害なため,環境に優しく,ナノポーラス合金の幅広い展開が期待される。亜鉛-コバルトの場合には温度,時間,圧力を制御することにより,ナノポーラス合金の細孔サイズをナノ~マイクロメートルの幅広い範囲で制御できた。また,真空度が細孔の形成に対して大きな影響を及ぼすこともわかった。
さらに蒸発した元素が容易にリサイクルできるので,効率的かつ環境に優しいナノポーラス合金の作製および設計のための新しい手法として普遍的な方法と成り得るとしている。