阪大,ナノ構造による超高解像度カラー印刷に成功

大阪大学は,誘電体メタサーフェスとよばれるシリコン(Si)ナノ構造を用いて 85,000dpiもの極めて高い解像度をもつカラー印刷の実証に成功した(ニュースリリース)。

玉虫やモルフォ蝶に見られる美しい色は色素ではなく誘電体の周期構造によって生み出されており,構造色とよばれている。構造色は周期的な構造体からの散乱光間の干渉により生まれる。2000年代にはフォトニック結晶とよばれる誘電体周期構造を人工的に作製し,色を出すことができるようになった。しかし,周期構造を必要とするため,高い解像度を実現することは困難だった。

2010年代に入ると金属ナノ構造体の光吸収を利用した様々な構造色が提案され,プラズモニックカラーとよばれるようになった。金属ナノ構造体は単一でも色を制御できるため,100,000dpiという極めて高い解像度のカラー画像生成が実現された。しかし,金属のもつ大きな損失のため色空間が狭く,高い解像度を保ったまま高彩度のカラー生成を行なうことは困難だった。

研究グループは損失の少ない高彩度のカラー生成を行なうため,高い屈折率をもつ誘電体であるSiに注目。高屈折率の誘電体ナノ構造に光が当たると,構造内部に励起されるMie共振によって特定の光が反射される。可視光域でこの現象を利用すると,色素等を使わなくても誘電体本来の色とは異なる様々な色を作り出すことができる。

周期配列による干渉で色を出すフォトニック結晶と異なり,誘電体メタサーフェスによって実現される色は,光の回折限界に近い解像度を持つことが可能。そのため誘電体ナノ構造をカラー印刷に用いれば,理論上最も細かい文字や絵を描くことができる。しかし,誘電体メタサーフェスによって生成される色が1ピクセルごとに判別できるかは分かっていなかった。

今回研究グループは,Siによる誘電体メタサーフェスが周期的に配列しても相互作用がなく,独立して色が生成されることを実証し,理論限界の解像度を得ることに成功した。

この研究の成果はあらゆる画像を物理限界の解像度で描くことを可能にする。このような特性は真似をすることが困難であるため,紙幣や工業製品などの偽造防止技術やディスプレー等への応用が期待されるという。また,この素子の構造はSiのみで構成されるため半導体微細加工技術と非常に相性が良く,プロセスラインへの組み込みが容易。そのため,今後の偽造防止用画像の技術の発展に大きく貢献するとしている。

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