阪大,太陽光で水分解する可視光応答光触媒を開発

大阪大学の研究グループは,黒リンとバナジン酸ビスマス(BiVO4)を用いた光触媒を開発し,この光触媒を使用すると紫外光のみならず可視光の照射によっても,水から水素と酸素を同時に効率よく生成できることを世界で初めて見出した(ニュースリリース)。

従来の光触媒では,太陽光の3-4%にすぎない紫外光を利用するため,水から水素への太陽光エネルギー変換効率が低いという問題や,犠牲剤やバイアス電位を必要とするため,実用性には程遠いなどの問題があった。

今回,研究グループは,紫外光のみならず可視光にも強い吸収をもつ数層からなる2次元層状構造の黒リンと,同じく数層からなる2次元層状構造のバナジン酸ビスマスとの2成分からなる複合体を合成した。

この複合体において,黒リンとバナジン酸ビスマスがともに可視光に応答して光励起される。黒リンの光励起によって生成した電子がプロトンを還元して水素を生成し,一方,バナジン酸ビスマスの励起によって生成した正電荷が水を酸化して酸素を生成することを見出した。

波長420nm光の照射の場合,水素と酸素の生成量はそれぞれ160および102μmol g-1 h-1だった。バナジン酸ビスマスの伝導帯から黒リンの価電子帯に電子が移動することで,水素と酸素を同時に効率よく生成する触媒反応が進行することがわかった。

この黒リンとバナジン酸ビスマスからなる光触媒は,犠牲剤やバイアス電位を必要とせず,可視光の照射下で水を完全分解する画期的な光触媒であり,太陽光から可視光を利用して,水から水素と酸素を同時に生成することが可能になった。

この研究では,太陽光エネルギーを化学エネルギーへ完璧に変換する方法として,人類の夢の一つであった,太陽光で水を分解して水素と酸素を生成することができる光触媒を開発した。その結果,水素社会において根幹となる,太陽光による水素製造の実現へつながることが期待されるとしている。

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