東工大ら,光電子ホログラフィーで3次元原子配列構造を観察

東京工業大学,高輝度光科学研究センター(JASRI),大阪大学,名古屋工業大学,奈良先端科学技術大学院大学の研究グループは,シリコン(Si)結晶に添加した,ヒ素(As)原子周辺の3次元原子配列構造の観察に成功した(ニュースリリース)。

半導体は様々な元素を添加することで,半導体デバイスを高性能化できる。しかし,これまで添加元素の構造を原子レベルで精密に捉える評価手法が無かったことから,半導体に添加された原子の配列構造や挙動を直接把握しながら制御する技術の開発が求められていた。

研究グループが用いた光電子ホログラフィーは,3次元的な原子配列を観察できる10億倍の倍率を持った顕微鏡を実現している。さらに今回はSPring-8のビームライン(BL25SU)に導入された高感度かつ高エネルギー分解能の角度分解光電子分光システムによって,添加元素の化学結合状態の違いを微小なエネルギーの差で識別できるようになった。

試料のSi結晶中に,Asが異なる3種類の化学結合状態で混在することは,既に放射光を用いた光電子分光法で定量的に見出されていた。今回,これら3種類の異なる状態の原子配列構造を光電子ホログラフィー法で初めて明らかにした。

東工大のグループがAsを添加したSi結晶の試料を作製,阪大による第一原理計算も組み合わせて系統的な解析を行なった結果,(1)As原子が単独でSi結晶の格子位置を占める格子置換構造,(2)Siの空孔の周りに格子置換As原子が2〜4個一定距離で配列したクラスター構造,(3)As原子周りのSiの結晶格子がランダム化する混合体の構造があることがわかった。

また,電気的特性について(1)ではAsが半導体中に電子を放出する電気的に活性な状態,(2)と(3)ではAsは電気的に不活性な状態になっていることを確認した。

Si中のAsの原子配列構造と電気的活性化状態が“見える”ようになったことから,様々なプロセス条件で,この構造がどのように変化するかその挙動を観察しながら,不活性構造を抑制して活性な構造の濃度を上げるプロセスの研究が可能になるとする。

この手法は,他の添加元素,さらには最近非常に重要度が高くなっている炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN),ダイヤモンドなどの広バンドギャップ半導体にも拡張でき,新材料のデバイス化技術の開発にも貢献できるとしている。

また,Si技術の周辺でもデバイスの極微細化にともなってその構造の一部にシリコンゲルマニウム(SiGe)が導入されているが,SiGe中では添加元素の活性化率が低減する等の新たな課題が出て来ており,これらの分野でも今回の技術が用いられることが期待されるという。

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