名古屋大学と東北大学は共同で,新型シリコン光センサーを用いた小型PET装置の開発に成功した(ニュースリリース)。
全身用PET装置は,腫瘍の早期発見に有用な医療機器として注目されている。しかし,全身用PET装置を用いた乳がんの検出では,検出器リング径が市販されている全身用PET装置では80㎝程度と大きなこと,また,体幹部による消滅ガンマ線の吸収が大きいため,高い感度で乳がんを検出することが困難だった。
この問題を解決するため,研究グループは乳房のみを測定可能な小型のPET装置を開発した。今回開発した装置は検出器リング径が26㎝と小さく,体幹部を計測することなく乳房のみを測定する。そのため体幹部によるガンマ線の吸収を受けず,また<リング径が小さいため高い感度で測定可能になった。
開発した小型PET装置は,新しいシリコン光センサーであるシリコンフォトマルを用い,高性能化と小型化を実現した。シリコンフォトマルはサイズが小さく薄いため,空間分解能を向上でき,また,検出器リング径を小さくできた。
さらに,PETを構成する検出器ユニットを曲面にしたため,ほぼ円形の検出器リングを構成できた。円形の検出器リングは,PET装置として理想的な検出器の配置であり,性能向上にも寄与する。空間分解能も2㎜前後と高い性能が得られた。
開発した小型PET装置は,ヒトの頭部も入る大きさを有するため,頭部用PET装置としても利用することが可能になった。近年,アルツハイマー病の早期発見がPET装置で可能になり,今後,治療に結びつく可能性があることから,開発した小型PET装置は,頭部診断用の装置としても期待され,アルツハイマー病の早期診断などに威力を発揮するものと期待できるという。
研究グループでは今後,メーカーと協力しながら,製品化を進めていく予定。