FDI,液体の会合状態を分析可能にする分子クラスタ分光装置を開発

開発した分子クラスタ分光装置『iTaster』
開発した分子クラスタ分光装置『iTaster』

フェムトディプロイメンツ(FDI)は液体の会合状態や熟成具合を,約60秒で数値化する分子クラスタ分光装置『iTaster』を開発した。

会合状態とは,炭素−炭素結合に代表される共有結合や,食塩の塩化物イオン−ナトリウムイオンの結合に代表されるイオン結合といった化学結合よりも弱いエネルギーで結ばれた分子間力によって形成される集合状態のこと。

今回,同社が開発した装置は液体製品の検査ニーズをターゲットにしたもので,計測にはテラヘルツ波を用いる。同社によると,「例えば,飲料製品の熟成具合を見る場合,担当者のテイスティングが一般的だが,この装置を利用することでバラつきがなく,定量的な計測が可能になる」としている。

極薄液体膜を作り出すディスポカートリッジ
極薄液体膜を作り出すディスポカートリッジ

キーポイントは同社社長の渡部明氏が開発したメソッドにあり,これは数十ミクロンの液体膜を作り出すディスポカートリッジを用いて,テラヘルツ波を液体膜に直接当て計測するというもの。テラヘルツ波は水の吸収が大きいため,水溶液が1 mmの厚みがあると情報を取得することができない。また,透明な板に挟む計測セルなどで薄い液膜を作ると,多重反射や板表面の汚染が計測に影響を及ぼす。開発したディスポカートリッジを使用することでこうした問題を解消する。

テラヘルツ波はフェムト秒レーザーによって発生させているが,「装置の省スペース化を図るため,小型で国産のものを選択した」という。同社はこれまでフェムト秒レーザーを用いたアプリケーション開発を進めてきたが,今回開発した装置が初製品となる。初年度は3台の販売を計画しており,2019年度までに累計300台の販売を目指す。

さらに今後は分子クラスタ分光データベースの構築と整備に加え,飲料製造ラインに向けた会合モニタリング装置の開発を行なうとともに,計測機製造権の提供と消耗品販売委託契約など様々な業界に対して応用展開を図るとしている。◇

(月刊OPTRONICS 2016年9月号掲載)