産業技術総合研究所(産総研)とカナダ トロント大学らは,グラフェンの両側を,数十㎚の薄膜のメソポーラスシリカで挟んだサンドイッチ型複合体において,グラフェン表面に対して垂直に配向した細孔の孔径や深さを制御できる技術を開発した(ニュースリリース)。
メソポーラスシリカは,孔径2~50 nmの細孔(シリカメソチャンネル)が蜂の巣などのように規則正しく並んだ多孔質シリカで,吸着材,触媒担体,ナノ空間反応場などとして有望。グラフェンとメソポーラスシリカの複合化により,両者の特長を兼ね備えた材料が期待されている。
しかし,センシング材料などへの応用では,基板に対して細孔が垂直に配向することが求められるが,これまでの合成技術では、シリカの細孔が基板に平行配向した材料が得られることが多く,細孔を垂直に配向させるには,高価な鋳型分子や外場(電場,磁場)の適用が必要だった。
サンドイッチ型複合体は,グラフェンの前駆体であるグラフェン酸化物,有機シリコン源,界面活性剤の溶液中でグラフェン表面の両側に細孔をもつシリカを成長させたもの。研究グループは,この複合体がこれまでできなかった細孔の孔径と深さの制御が可能なことを見出した。
分子鎖の長さ(鎖長)の異なる界面活性剤を用いてグラフェン酸化物上の吸着ミセルのサイズを変え,グラフェン-メソポーラスシリカのサンドイッチ型複合体を合成したところ,界面活性剤の鎖長が長くなるにつれて,複合体の細孔の孔径が大きくなった。すなわち,開発した複合体では,界面活性剤の鎖長を変化させることで,シリカメソチャンネルの孔径を1nmから5.5nmまで調節できた。
孔径や深さは,メソポーラスシリカ膜の細孔内に侵入した分子の吸着力,吸着分子・反応分子の拡散距離,選択性を持つ分子のサイズの閾値などの機能に影響する重要な因子。これらを制御できるようになることで応用範囲が広がるため,分子ふるい型汚染物センシング,ドラッグデリバリーシステムなどへの応用も期待されるとしている。