京大ら,ブラックホール近傍の環境を測定

京都大学の研究グループは,チリ カトリカ大学,スイス チューリヒ工科大学などと共同で,透過力の強い硬X線で見つかった多数の活動銀河核(銀河の中心部で明るく輝く領域)を,世界中のX線望遠鏡や地上の可視光望遠鏡を用いて詳しく調査することで,巨大ブラックホールの質量,輻射光度,覆い隠しているガスの量を精度よく測定することに成功した(ニュースリリース)。

銀河の中心に普遍的に存在する巨大ブラックホールの成長メカニズムとその環境の理解は,現代天文学の大きな課題の一つ。巨大ブラックホールに周囲のガスが流れ込むと,銀河の中心部が明るく輝き、「活動銀河核」として観測される。これらの活動銀河核の大多数は,大量のガスや塵に覆われていることがわかっているが,その理由は長年来の謎のままだった。

研究グループは,偏りのない多数の活動銀河核サンプルを作り,その「統計的性質」を調査するという方法をとった。活動銀河核の一つ一つについて,その基本的性質である(a)光度(ブラックホールからの輻射エネルギーの強さ),(b)ブラックホールを隠している視線方向にあるガスの量,(c)ブラックホールの質量を,X線望遠鏡や地上可視光望遠鏡を用いて精度よく求めていった。

詳しいデータ解析の結果,「ブラックホール質量に対する光度の比」が大きくなるほど,ブラックホールを覆い隠しているガスの量が減っていることがわかった。つまり,周囲のガスの分布を決定する主要因は,ブラックホール質量で規格化した降着率(単位時間あたりにブラックホールが吸い込むガスの量)であることが,世界で初めて明らかになった。

ブラックホールがあまりにも急速に物質を吸引する結果,放射される光の力が自身の重力よりも強くなってしまうと,覆っていたガスは吹き飛んでしまい,ブラックホールがそれらを吸い込んで「太り続ける」ことはできなくなる。この研究成果は,巨大ブラックホール及びそれと共に進化する銀河の成長メカニズムを理解する上で,鍵となる発見だとしている。

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