情報通信研究機構(NICT)は,光ファイバーで伝送されたパケット信号の経路を切り替える光交換技術において,従来の世界記録を4倍以上更新し,53.Tb/sの光パケット信号のスイッチング実験に成功した(ニュースリリース)。
今回NICTは,新たに高速並列光スイッチシステムを開発した。この光スイッチシステムとこれまで開発したマルチコア光ファイバを接続し,53.3Tb/sの7コア多重光パケット信号のスイッチング実験に成功した。この速度は従来の世界記録を4倍以上更新し,1秒間に非圧縮8K映像370チャネル相当の光信号に対応可能なもの。
このスイッチシステムは,以下の要素技術から構成される。
・小型で繰り返し高速切替えを行う新型並列光スイッチ(NICT委託研究「大規模フラットネットワーク基盤技術の研究開発」の成果の一部を利用)
・光パケット信号の宛先に応じ,複数の新型並列光スイッチを同時に駆動させるスイッチコントローラ
このスイッチシステムは,80ナノ秒の時間で7コア多重光パケット信号の宛先を判断し,一括で同じ経路に切り替えることができる。例えば,通信幹線における無瞬断の経路変更や大規模データセンタにおけるビッグデータの瞬時転送等が可能となる。
また,マルチコア光ファイバとこのスイッチシステムを利用することで,データセンタのネットワーク装置の設置スペースの大幅な縮小や消費電力の低減が可能になるという。
今後,NICTは光スイッチシステムの実用化を目指して,産学官連携による研究開発の取組を積極的に推進し,光ネットワークの更なる高速化技術の研究開発に取り組んでいくとしている。