東北大学の研究グループは,原子オーダーの厚みを持つシート材料である遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)を用いて,透明かつフレキシブルな太陽電池の開発に成功した(ニュースリリース)。
近年,グラフェンと類似構造を持つ炭素以外の原子から構成された二次元シートが注目されている。特に遷移金属(モリブデンやタングステン)とカルコゲン原子(硫黄やセレン)から構成されるTMDは,グラフェンとは異なり半導体特性を示すことから,半導体フレキシブルエレクトロニクス分野で特に注目されている。
中でも,太陽電池への期待は大きく,原子オーダーの厚みであるため90%以上の光を透過する“透明かつフレキシブルな太陽電池”としての応用が期待できる。しかし,TMDを用いて実用レベルの大面積デバイスを作成することは極めて困難とされてきた。
研究では従来広く用いられているデバイス構造とは異なり,電極との仕事関数差により決定されるショットキー構造を利用したショットキー型太陽電池に着目した。TMDの両端に設置する電極の種類を変えた異種金属電極構造を用い,この両端電極対の組合せを様々変化させたところ,両端電極の仕事関数差(ΔWF)が大きくなるにつれ発電効率(PCE)が向上することを見出だした。
次に電極の間隔とTMDの配置方法を最適化し,電極間隔を短く(~2μm以下)かつTMDを基板に接触しない架橋型とすることで,発電効率が大幅に向上することが判明し,透明なTMDを用いた太陽電池では世界最高の発電効率0.7%を達成した。
さらに,簡便な本手法を用いることで透明フレキシブルな大面積基板上での太陽電池作製が可能であることを実証した。透明フレキシブルな太陽電池が実現できることで,現在主流のシリコンを用いた太陽電池では設置が困難な車のフロントガラスやビルの窓,携帯電話ディスプレイの表面,さらには人体の皮膚等あらゆる場所へ太陽電池を設置することが可能となるとしている。