昭和電工は,パワー半導体の材料である炭化ケイ素(SiC)エピタキシャルウエハ(エピウエハ)の高品質グレード「ハイグレードエピ(HGE)」の生産能力増強を決定した(ニュースリリース)。2018年4月から稼働開始し,月産能力は現在の3000枚から5000枚に拡大する。
SiCパワー半導体は,データセンターのサーバー用電源,新エネルギーの分散型電源に加え,近年は鉄道車両のインバータモジュールや電気自動車用急速充電スタンドでも採用が進み,2020年までのSiCパワーデバイス市場は年率27%と大きな伸びが見込まれている。
高電圧・大電流に耐えうるパワーモジュールには主にSBDとMOSFETが搭載されているが,現状はSiC-SBDの量産化が先行し,SiC-MOSFETの実用化には欠陥の低減が課題となっていた。同社が開発したHGEは,代表的な結晶欠陥である基底面転位を0.1個/㎠以下に抑えた。
2015年10月の販売開始以降,SiC-SBD用途に加え,SiC-MOSFETの実用化に向けた採用も進んでいる。HGEの生産体制は現在フル稼働が続いており,来年以降SiC-MOSFET市場の本格的な立ち上がりが見込まれることから,今回の能力増強を決定した。
SiCパワー半導体は車載での早期実用化も検討されており,SiCエピウェハーの市場規模は2020年に200億円規模に拡大すると予想されているという。