2012年の世界医療機器市場は約3,000億ドルで,世界半導体市場(3,500億ドル/2015年)に匹敵する規模となっている。さらに,2007年~2012年の年平均成長率は2ケタ近く,今後5年間でも年率ベースで8%レベルの成長が想定されており,2017年には4,344億ドルになると予想されている。
とりわけ,アジアの過去5年平均成長率は22%,今後5年でも年率16%と高成長が見込まれている。これは今後5年間で新たに約3.7兆円の医療機器市場が創出されることを意味しており,魅力的な市場といえよう。
しかし一方で,日本では開発から医療機器として承認されるまでの「デバイスラグ」が欧米に比べて長く,製品化が遅れることが問題となっている。
現政権はアベノミクスのもと規制緩和を進めており,審査機関の増員などを行なっているが,それでもまだ不十分との声も多い。そのため,医療機器市場に興味を示しながらも,いざ参入となると及び腰になる企業も少なくないようだ。
こうした状況の中,開発技術を「医療にも使えますよ」と提案する形で,緩やかに参入機会を伺う企業が増えている。特に光学製品は医療との親和性も高く,業界では当たり前の技術でも医療現場では「新鮮に受け止められることも多い」(ファイバーメーカー担当者)といい,開拓の余地は大きいものと考えられる。
ここでは「生体の窓」と呼ばれる,人体への透過性が高い,近赤外線LEDを用いた分光センサーを医療応用にアピールするメーカーの例として,ミツミ電機とアルプス電気の開発品を紹介する。
ミツミ電機が開発したのは,小型・安価な近赤外小型分光モジュール。この装置は,光源に近赤外線LEDを用いており,回折格子を介した回折光を試料に照射し,その透過光をフォトダイオードで受光する構造となっている。
分析対象の幅を広げるために複数の近赤外LEDを搭載しており,それぞれ高い回折効率が得られるよう,光学設計の最適化を図っている。これによりLED光源でありながら広範囲な分光スペクトル(1450~1850 nm)の測定が可能になるとしている。また,LEDを変えることで測定域をカスタマイズすることもできるという。
現在は試作段階なので,分光部,試料ホルダ部,受光部のブロックに分割しているが,製品化時は41.0(W)×63.0(D)×24.5(H)mm(回路スペースを除く)の手のひらサイズのモジュール化を計画している。価格は,分光器は高価であるというイメージを変え,有用な分光測定をより多くのアプリケーションに展開できる低価格帯を目指しているとしている。
デモンストレーションでは,キュベットに入れた無糖コーラと普通のコーラの糖質量の違いを測定したほか,アクリルやPETなどのプラスチック材料の識別や厚さ測定を披露した。
同社は,この装置の製品化を見据え市場調査を行なっており,例えばトイレに設置することで簡易的にさまざまな尿中成分をモニタリングできるのではないかと提案している。