注目のレーザー塗膜除去技術

CoolLaser®によるクリーニングの例。母材にダメージを与えることなく表面処理を可能にする。
CoolLaser®によるクリーニングの例。母材にダメージを与えることなく表面処理を可能にする。

今回,新たな工法の確立によって標準化に向けた取り組みも開始する。同社と光産業創成大学院大学が申請していた,新市場創造型標準化制度を活用した「レーザー照射による構造物鋼材表面処理の評価基準」制定について,日本工業標準調査会(JISC)の承認を受けてのものだ。

橋梁などの構造物鋼材の下地処理において,この評価基準が標準化されることで,客観的に品質が担保された処理工法の選択肢が増え,ユーザーの利便性の向上につながると見られている。「ブラスト工法では,その品質の判定を目視で行なっているが,レーザーによる工法では数値化する必要がある」(同社)という。こうした品質基準の整備を行なうとしている。

具体的には,①残留塩分濃度:処理を終えた表面の基準面内における残留塩分重量,②清浄度:処理を終えた表面の基準面内におけるさびなどの専有面積率,③酸化被膜率:処理を終えた表面の基準面内における酸化被膜の専有面積率,④表面粗さ:日本工業規格(JIS)に規定されている十点表面粗さ(80 μm 以下であること)―これらを原案作成委員会で評価項目,評価基準に関して議論していく予定だ。

ブラスト工法のJISに加え,レーザー塗膜除去の評価基準がJISとして制定されることにより,大型鋼構造物の劣化状況や劣化箇所に応じた処理工法の使い分けが容易になり,全体的な施工レベルの向上により付加価値の高い大型鋼構造物の維持管理が期待されている。

今後は,日本規格協会が原案作成委員会を設置し,JISの原案作成及び原案に基づく評価試験とフィードバックを行ない,2017年9月頃のJIS制定公示を目指して活動を開始する。原案作成委員会にはトヨコーと光産業創成大学院大学が加わり,主にレーザー照射試験,照射後評価試験を担当するという。◇

(月刊OPTRONICS 2016年4月号掲載)