理化学研究所(理研)と大阪大学の研究グループは,組織透明化/3次元イメージング技術「CUBIC」が病理組織診断に応用できることを実証した(ニュースリリース)。
病理組織診断は,腫瘍性疾患の悪性度・分化度・転移の有無や,炎症性疾患・自己免疫性疾患の炎症・線維化の程度といった病的所見を組織形態学的に診断する医療行為のことで,患者への治療方針決定の根幹に関わる重要なもの。
病理組織診断は,薄切した病変組織を染色し作製したスライドガラスを,訓練を積んだ病理診断医が顕微鏡で観察することによって行なわれる。しかし,現在用いられている標準的な方法には,肉眼で見て最も疑わしかった部位を通る断面だけを薄切し観察すること,平面上の二次元的な組織しか評価できないことといった技術的な限界があった。
研究グループは今回,理研が2014年に発表した組織透明化/3次元イメージング技術である「CUBIC」の病理組織診断法における有用性を詳しく検討した。その結果,①この技術により病理組織検体における正常および病的な組織所見を3次元的かつ明瞭に描出できること,②この技術が従来のスライドガラス作製法と両立可能なこと,③病院に長期保管されているパラフィンに包埋された状態の検体にも応用できることを示した。
さらにこの技術を,病変を発見するための実際の臨床病理検査におけるスクリーニング系に応用し,検査の感度を向上させることにも成功した。
この研究は,これまで実験動物を用いた基礎生物学分野で主に使用されてきたCUBICを,本格的にヒト病理組織診断に応用することに成功したという意味で,臨床応用学的に大きな意義のある成果。また,透明化することでの試料へのダメージはほとんどなく,現在標準的な病理組織診断法へ拡張的に組み合わせることができることも大きな利点だという。