東工大ら,圧電体の結晶構造変化を放射光で直接測定

東京工業大学,名古屋大学,高輝度光科学研究センター,NIMS,ニューサウスウエールズ大学らの研究グループは,電圧によって形状が変化する圧電体結晶について,原子の変位,単結晶領域の再配列などの複雑な現象が,1億分の4秒(40ナノ秒)の短時間に高速で起きていることを,大型放射光施設SPring-8の高輝度放射光を用いた時間分解X線回折実験によって,世界で初めて解明した(ニュースリリース)。

圧電性については,電圧を加えることや機械的な力を加えることによって起きる結晶自身の伸びの他に,ドメインと呼ばれる微小領域の結晶の向きの変化等の複数の現象が同時に起きることが知られていたが,個々の現象がどのくらいの速度で起きるかはわかっていなかった。

大型放射光施設SPring-8表面界面構造解析ビームラインBL13XU,および同施設の物質・材料研究機構のビームラインBL15XUの数マイクロメートルに集光した高輝度単色パルスX線を,最も広く使用されている圧電体であるチタン酸ジルコン酸鉛膜上に形成した電極に照射し,200ナノ秒幅のパルス電圧を印加して観察し,回折データを電荷量の変化とともに高速で記録した。

ここでは電圧を加えると,結晶の伸びや電圧印加方向へのドメインの再配列等が起こっていることが判明した。またこの際,結晶の単結晶領域の傾斜角度が同時に変化していることも明らかになった。

注目すべき点は,こうした複雑な現象は同時に起こっており,そのスピードは今回試料で測定可能な1億分の4秒(40ナノ秒)よりも速いことを世界で初めて明らかにした点。

今回の成果により,圧電性の発現機構の解明,圧電体の性能向上への貢献,非鉛圧電体開発の加速による環境問題への貢献,IoTセンサーの開発加速への貢献が期待できるとしている。

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