安全・燃費の向上と軽量化を開発アプローチとして自動車のエレクトロニクス化が進んでいる。その実現に向けては光技術の果たす役割が大きくなりつつある。自動車産業分野におけるこの潮流は世界規模で起こり始めており,ビジネスチャンスとして捉えるため,その市場動向に関心が集まっている。
今回,世界各国のマーケット調査機関がまとめている調査報告書より,自動車産業を支えるフォトニクス関連市場をワールドワイドに見るという観点から「カメラ」,「ADAS(先進運転車支援システム)」,「LEDや赤外線デバイス」のそれぞれの市場動向を紹介したい。
■自動車用カメラ/カメラモジュール市場
⑴赤外線カメラ
赤外線カメラは主にドライバーの運転状態を監視するシステムに利用されるケースが多い。ドライバーの顔に向けて設置された車内カメラでドライバーを監視し,例えば,ドライバーに眠気の兆候が見られると警告を発するなどのモニタリング用途で使用される。赤外線カメラの市場規模は2015年の12億890万米ドルから2020年には23億2,960万米ドルにまで拡大すると見られている(表1)。ドライバーモニタリングシステムの開発はデンソーやボルボなどが取り組んでいる。
⑵暗視カメラ/暗視システム用カメラモジュール
主に近赤外線カメラを使用する暗視カメラシステムは自動車アクティブセーフティーシステムの中でも最も高度な技術とされている。現在は高級車を中心に搭載が進んでいるが,キーデバイスとなる暗視システム用カメラの市場は今後ますます広がるものと見られている。
暗視システム用カメラの世界市場は2013年から2020年までにおいて数量ベースで年平均13.6%成長すると予測されている。金額ベースでは2015年の5億710万米ドルから2020年には9億6,030万米ドルに拡大するとしている。2015年では北米が最も大きな市場となっており,欧州,アジア太平洋,その他地域と続く。
北米市場における暗視システム用カメラは2015年末で2億1,020万米ドルの規模に達すると見られている。
2015年から2020年まで成長率が最も高いのも北米で,年平均15.3%で拡大すると予測されている。一方,暗視システム用カメラモジュール市場は2015年時点の2億1,480万米ドル規模から年平均13.6%で拡大し,2020年には4億680万米ドルに達すると予測されている(表2,3)。
カメラやカメラモジュールを搭載した暗視システムの世界市場は2014年に10億8,000万米ドルであったが,2019年までに年平均18.3%で成長し,25億米ドルに達すると見られている。
自動車用カメラ及びカメラモジュールの市場(2014年時点)にはRobert Bosch Gmbh,Continental AG,Delphi Automotive PLC,Valeo,Autolivの5社が参入しており,それぞれ市場シェアは29%,22%,11%,9%,5%となっている。