矢野経済研究所では,次世代住宅関連設備機器メーカー,ハウスメーカー,関連業界団体他を対象として,国内の次世代住宅(スマートハウス,ZEH:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)関連主要設備機器市場の調査を実施した(ニュースリリース)。
それによると,政府の「エネルギー基本計画」での言及もあって,ハウスメーカー各社からはZEH仕様の住宅商品も続々と上市されており,これらの住宅を構成する各種設備機器の需要も高まりを見せているが,市場の大半を占める太陽光発電システムの縮小の影響から,2016年度の次世代住宅関連主要設備機器市場規模(末端販売額ベース)は前年度比87.7%の7,191億4,000万円と推計している。
これまで市場を牽引してきた太陽光発電システムは,補助金が終了した2014年度以降大きく減少傾向にある。その後,FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)の買取価格の下落も進み,売電での経済的メリットも薄れて太陽光発電システム単体では訴求力が弱まったため,各販売事業者は,HEMSや蓄電池等とセットで販売することでなんとか拡販を目指しているが,厳しい市況だという。
余剰電力の売電による経済的メリットが薄まっており,また,2019年度に訪れるFIT契約満了者には更に低い売電価格の設定が予測されるため,販売事業者等が余剰電力の売電から蓄電(もしくは自家消費)へと促す動きがみられるなど,家庭用蓄電システムが注目されている。
太陽光発電システムの減少傾向は2020年度まで続く見込みで,2020年度の次世代住宅関連主要設備機器市場規模(末端販売額ベース)は2016年度比70.6%の5,074億2,000万円を予測する。しかし,既に市場が形成されている太陽光発電システムと社会インフラ的要素を持つスマートメーターを除く2020年度の次世代住宅関連主要設備機器市場規模(同ベース)は2016年度比142.3%の1,784億2,000万円と増加傾向を予測する。
次世代住宅関連主要設備機器市場が今後拡大していくためには,機器コストの低下が不可欠となる。政府が取り組んでいるZEH仕様であっても,通常の住宅よりも約300万円の追加費用が必要(更に太陽光発電システムなどは別途費用)といわれており,新築住宅を計画している世帯でも,比較的経済力が豊かな世帯に限られているのが実状。
また,現在はエネルギー使用量の“見える化”やエネルギー設備機器の自動制御機能の活用に留まっているのが実状であり,これらの機器を導入するには相当のコスト負担が必要となるため,環境配慮や、省エネルギーおよびそれに伴う光熱費の低減だけでは,生活者の動機付けとしてやや弱く感じられる。
それらの解決策として,次世代住宅関連設備機器,特にHEMSを活用した新たな付加価値の提供が鍵を握ってくるとする。HEMSで取得・管理するデータを活用することにより,エネルギー面のみならず,安全・安心,福祉,健康増進など住宅を舞台とした様々なサービスの他,住宅・設備機器のメンテナンス,取得データを異業種企業と連携しながら活用することで様々な生活サービスの充実に活かすことが期待されているとしている。