早大ら,らせん状低分子有機化合物の合成法を開発

早稲田大学と阿南工業高等専門学校,東京理科大学らの研究グループは,市販の試薬から僅か2工程で,高い蛍光量子収率と円偏光発光異方性因子(g値)を併せ持つ低分子有機化合物の合成法を開発した(ニュースリリース)。

現在,キラルな光である円偏光(CPL)が,高輝度液晶ディスプレーの光源や新たな光情報通信の基盤技術として注目されており,円偏光発光材料としての低分子有機化合物の開発が強く求められている。

中でも,ヘリセンと呼ばれるベンゼン環などの芳香環がらせん状に連結された化合物に関する研究が活発に行なわれている。しかしこれまでの七環式以上のヘリセンの合成法では,市販の試薬から多くの工程数が必要であるため,大量合成が困難だった。

さらに,ヘリセンは有機化合物の中では比較的高い円偏光発光異方性因子(g値)を示すが,一般的に発光特性(蛍光量子収率)が低いことが,ヘリセンを光学材料として応用する上での大きな課題となっていた。

今回,研究グループは市販品から僅か2工程で含窒素七環式ヘリセン類の合成を達成し,熱安定性が高い構造であること,かつそれらが高い蛍光量子収率と円偏光発光異方性因子を両立し得る化合物であることを見いだした。この合成手法は,さらに環数の多い高次のヘリセンや,環同士の連結形式の異なるヘリセンの合成にも適用が可能。

研究グループは今後,種々の類似の化合物を合成することにより,さらに円偏光発光特性の優れた材料となるヘリセンを創製する予定。将来的には,高輝度液晶ディスプレー用の偏光光源,3次元ディスプレー,セキュリティーペイントなどの高度な光情報処理技術を実現する機能性有機化合物の開発が大きく期待されるとしている。

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