東大ら,分子のスピン状態の制御に成功


東京大学と物質・材料研究機構(NIMS)の研究グループは,金表面に吸着した鉄フタロシアニン分子に走査トンネル顕微鏡の針を近づけ,鉄原子の位置をサブオングストロームスケールで制御することで,分子のスピン状態を可逆的に変化させることに成功した(ニュースリリース)。

その背後にあるメカニズムは,近藤効果とスピン軌道相互作用の拮抗。分子内部の鉄に局在したスピンが近藤効果によって生じる量子多体状態をとるか,スピン軌道相互作用による異方的なスピン状態をとるかは,分子と金表面の相互作用によって決まる。

STMの針による分子操作でこの相互作用を精密に変調することで,2つの状態間の量子相転移を実現し,それが分子の電気伝導特性の変化によって検出できることを実験・理論によって初めて明らかにした。

分子操作によってこのような量子相転移を制御・観測した例はこれまでにない。この研究成果は,量子多体現象に対する理解の深化や,単分子デバイスの新たな動作機構につながるものだとしている。

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