国際電気標準会議(IEC)において,我が国から国際標準化を提案した「有機ELモジュールの安全性」について,国際標準の開発が開始されることになった(ニュースリリース)。
照明の分野において,省エネルギー性が高い次世代照明と呼ばれるLED照明や有機EL照明に大きな期待が寄せられている。特に,点光源であるLEDとは異なる,面光源である有機ELを用いた照明は,その特徴を活かして,用途を拡大して普及していくことが期待されている。
しかしながら,照明用の有機ELパネル自体の安全性についての国際規格は発行されているものの,有機ELパネルを点灯するための制御装置を内蔵した「有機ELモジュール」については,安全性についての国際的な規格がなく,モジュール全体としての安全性を証明することが大きなコストとなっており,普及の妨げとなっていた。
そのような状況を受け,経済産業省からの委託を受けた山形大学及び日本照明工業会が,制御装置内蔵照明用有機ELモジュールの安全性等についての検討・開発を行ない,その成果を元に,IECの照明に関する専門委員会(IEC/TC34)に国際標準の策定を提案したところ,IECにおいて承認され,この提案を元に,国際標準の検討が行なわれることになった。
今回,日本から提案した国際標準案は,一般照明用に利用される制御装置内蔵形有機ELモジュールの安全要求事項を規定したものであり,具体的には,次のような技術的基準を定めることを提案している。
一般的事項 :適用範囲,引用規格,用語及び定義など
構成・機械的事項:表示,構造,端子,ねじ,耐熱性・耐火性など
電気的要求事項 :通電部及び接続部,保護接地,故障状態など
その他の要求事項:光生物学的安全性など
この国際標準が発行されることにより,有機ELモジュールの安全性の証明が容易になることでコスト低減につながり,ひいては有機EL照明の普及が促進されることが期待されるとしている。