名古屋大学の研究グループは,独自に開発した高圧合成手法と放射光X線構造解析および第一原理電子構造計算を用いて,新しい二元系の強磁性窒化鉄と強磁性窒化コバルトを発見することに世界で初めて成功した(ニュースリリース)。
鉄やコバルトなどの強磁性金属の窒化物は,磁気メモリーやモーター用などの新しい磁性材料として期待されている。特に,鉄の窒化物はレアアースフリーの安価で新しい磁性材料として期待されてきた。そのため,鉄やコバルトの全く新しい窒化物の合成を目指して,長年研究がなされてきた。
研究グループは,独自に開発した高圧合成手法を用いて,鉄とコバルトを高圧高温超臨界窒素流体と反応させると,窒素を多量に含んだ新しい二元系の窒化鉄と窒化コバルト(ヒ化ニッケル型のFeNとCoNおよびマーカサイト型CoN2等)を形成することを発見した。
さらに,あいちシンクロトロン光センターでの放射光X線回折測定を用いた結晶構造解析と第一原理計算による電子構造解析の結果,これらの窒化鉄と窒化コバルトが強磁性を示すことを見出した。
二元系の全く新しい強磁性窒化鉄と強磁性窒化コバルトの発見は,今後の新しい磁性材料の開発と新しい遷移金属窒化物の創製につながり,この成果によって,基礎・応用両面でこれらの分野における新しい展開が期待されるとしている。