東芝は,IoTで用いられるMEMSセンサー向けに,従来の金属ひずみゲージの2500倍,半導体ひずみゲージの100倍以上の超高感度スピン型ひずみ検知素子を開発した(ニュースリリース)。
また世界で初めて,スピン型ひずみ検知素子を搭載したスピン型MEMSマイクロフォンを開発し,人の耳では聞こえない超音波まで検出できることを実証した。
MEMSセンサーの多くは,外部からの圧力や音圧などの力により変形するMEMS構造体と,変形したMEMS構造体に生じるひずみを電気信号に変換するひずみ検知素子から形成されている。ひずみ検知素子の高感度化によりMEMSセンサー自身の精度向上がもたらされる。
例えば高感度なひずみ検知素子をマイクロフォンに適用した場合には,産業・車載機器から発生する微小な異常音でも高精度に検知することが可能になるため,従来から使用されている半導体ひずみゲージよりも高いひずみ検知感度の実現が望まれていた。
そこで同社は,従来HDDヘッドやMRAMに用いられているスピントロニクス技術を応用し,新たなひずみ検知素子「超高感度スピン型ひずみ検知素子」を開発した。
この素子は,従来HDDヘッドの磁界センサーとして用いられてきたMTJ素子に,ひずみによって磁性体の磁化の向きが変化する磁歪効果を応用することで,ひずみ検知素子として機能させたもの。
磁性体層に磁歪効果の大きいアモルファスの鉄・ホウ素合金材料を採用し,ひずみ検知感度を大幅に向上させた。この素子のひずみ検知感度は,従来の金属ひずみゲージの2500倍,半導体ひずみゲージの100倍以上で,同社はこの素子を搭載することで高精度に計測できるMEMSセンサーを実現する。
また,同社は,世界で初めてスピン型ひずみ検知素子を搭載したスピン型MEMSマイクロフォンを開発し,動作実証に成功した。今回開発したMEMSマイクロフォンは,人の耳が聞き取ることのできる音域を超えた超音波まで広帯域で高精度な検出が可能。
このような広帯域マイクロフォンでは,MEMS構造体に生じるひずみが小さいため十分な電気信号を得られず,微小な音の検出が困難だったが,新たにスピン型ひずみ検知素子を搭載することで従来両立できなかった広帯域で且つ高精度なMEMSマイクロフォンを実現する。
幅広い周波数帯域の稼働音を高精度に取得できることから,様々な機器の状態監視や故障診断への応用が期待できるとしている。