オハラ,車載カメラ用レンズ材を開発

オハラは,自動運転等でニーズが高まりつつある車載カメラレンズ用光学ガラスを開発した(ニュースリリース)。

従来の光学ガラスはデジタルカメラ,顕微鏡等に適した光学ガラスだったが,より厳しい環境下で使用される車載カメラ用としては耐環境性,耐衝撃性,耐温度変化特性の面で最適なレンズ材料とは言えなかった。

同社は車載カメラでの使用を前提とした光学ガラスの開発を進め,車載カメラ用としては世界初となる専用設計した光学ガラスを3種類一⻫販売した。

そのうち「S-LAL20」は屈折率(nd)が1.69以上の低分散ガラスでは温度変化に対する屈折率変化を示すdn/dtの値が世界初となる-1.2(Dline 40°C〜60°C)を達成した。

車載カメラの中でも特に外気と触れる前玉のレンズは化学的耐久性に優れている必要がある。化学的耐久性の良い光学ガラスは外気と接触してもレンズ表面の腐食によるクモリが発生しにくいため,⻑期的にカメラの視界が確保される。

また,車載カメラはが受ける温度変化は光学系の結像特性はもとより,熱衝撃も与える。たとえば炎天下にて車が熱くなった状態で雨などにより急冷されると,ガラスに熱応力が発生し,レンズが割れてしまう可能性もあるが,耐熱衝撃性を考慮し設計することで,熱に対して強固で壊れ難い車載カメラとなる。

さらに,車外のカメラは大気中の粉塵やタイヤなどによって巻き上げられた小石等にさらされるためレンズに傷が生じるなどといった悪影響が及ぼされることがある。レンズの前玉は傷が生じにくい光学ガラスを使用する必要がある。

車載カメラの光学系は自動車のあらゆる箇所に設置され様々な温度環境に曝される。また光学系は⻑期間の安全保証が必要なため可変焦点機能を廃した固定(単)焦点のものが多くなる。

また,dn/dtとは温度変化に伴う屈折率変化のことだが,車載カメラの温度環境が変化するとレンズの屈折率が変化してしまい,結果として焦点位置がずれ,鮮明な画像をとらえることが出来なくなってしまう。

可変焦点機能を有するカメラでは屈折率変化による焦点位置のズレを可変焦点機能で調整することができるが,固定焦点のカメラではこの調整ができない。そのために,車載カメラのレンズは温度が変化しても屈折率が変化しないように光学ガラスを組み合わせて設計することが重要となる。

「S-LAH52Q」と「S-LAL20」は,これまでの光学ガラスにはなかった特異なdn/dtの値を持っているため,温度ドリフトを効率的に補正し,車載カメラの性能を大きく向上させることができる

なお,これら3つの製品は車載カメラ専用光学ガラスとして開発したものだが,温度変化による屈折率変動を考慮するプロジェクター製品をはじめ,デジタルスチルカメラ等,あらゆる光学製品にも使用できるという。

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