三菱ケミカル(MCC)と物質・材料研究機構(NIMS)は,両者が共有する,LED用として広く用いられる赤色蛍光体に関する中国特許について,中国の英特美光電(蘇州)有限公司(英特美光電社)が,2016年11月2日付で特許復審委員会に請求していた無効審判において,同委員会が英特美光電社の主張を全面的に退けて本特許の有効性を認めたと発表した(ニュースリリース)。
この特許は,通称CASN,SCASN又は1113蛍光体と呼ばれる窒化物系の赤色蛍光体およびそれを用いたLED,照明器具や LCDバックライト等を広くカバーする基本特許群の中の1つ。この蛍光体は,高い輝度と信頼性からLED用として最も広く使用されている赤色蛍光体で,MCCが製造販売している赤色蛍光体は,LEDメーカー各社で使用されている。
なお,MCCは2015年1月23日付で,米国Intematix Corporation(中国名:英特美公司)および英特美光電(蘇州)有限公司,中国での販売代理店である深圳格亮光電有限公司の3社に対し,同特許を侵害しているとして,中国における蛍光体製品の生産および販売等の侵害行為の差し止めと損害賠償を求める訴訟を深圳市中級人民法院に提起している。
この特許侵害訴訟は現在審理中だが,今回,この特許の有効性が特許復審委員会により認められていることから,今後の同訴訟の迅速な進行が期待されるという。今回の決定は,長年中国で積極的に投資,事業展開を行なってきたMCCにとって重要な知的財産の有効性が法により改めて認められたものだとしている。