徳島大学と放送大学の研究グループは,天の川銀河の分子ガス雲と天の川銀河以外の活発に星を生んでいる分子ガス雲の間にある,明瞭なギャップを埋める新種の分子ガス雲を発見した(ニュースリリース)。
中心部分がひときわ明るく見える銀河があり,その中心部分は活動銀河中心核と呼ばれている。これらの銀河では,中心にある超巨大ブラックホール(太陽質量の100万倍以上)にガスや塵が降り積もり,その時に解放される重力エネルギーを,可視光などの電磁波に変えており,太陽の1億倍から1兆倍以上の明るさになる。
星は星間ガスから生まれるので,星間ガスの性質を見極めることは非常に重要となる。しかし,従来の電波望遠鏡では角分解能が不足していて,こうした活動銀河中心核付近に存在するガスの性質を調べることは不可能だった。
星間ガスの濃さ(密度)や温度はさまざまだが,星が生まれる星間ガスは密度が高く(水素分子の個数密度>105cm−3),極低温(約10K)の静かなガスとなっている。それらは分子ガス雲を形成して,銀河の円盤部に漂っている。分子ガス雲の質量とそのガス雲の中で星が1年あたりどのくらい生まれるか(星生成率)には良い相関があることが知られているが,天の川銀河の分子ガス雲と天の川銀河以外の活発に星を生んでいる分子ガス雲の間には明瞭なギャップがあり,謎とされていた。
研究グループは,このギャップを埋める新種の分子ガス雲を発見することに世界で初めて成功した。アルマ望遠鏡で得られた高解像度の電波観測データを用いて,近傍宇宙の代表的な活動銀河中心核を持つ渦巻銀河NGC1068(=メシエ77 [M77],くじら座の方向で約5000万光年の距離にある)の中心核(超巨大ブラックホール)からわずか50光年の至近距離(天球に投影した距離)にある分子ガス雲の性質を調べてみた。
この分子ガス雲は太陽の約20万倍の質量を持ち,活発に星を生んでいる。そして,この分子ガス雲の質量と星生成率を星生成率の相関図にプロットしてみたところ,このギャップを埋めることがわかった。星生成率のような関係を“スケール則”と言う。この発見で,分子ガス雲と星生成率の間にあるスケール則が普遍的であることが確実になったという。
今まで知られていなかったスケール則上のミッシング・リンクの発見に至ったことで,星や星団がうまれるプロセスを理解する上で,きわめて大きなステップを得たことになるとしている。