神戸大学の研究グループは,これまでにない新しい太陽電池セル構造を提案し,従来はセルを透過して損失となっていた波長の長い太陽光のスペクトル成分を吸収して変換効率を50%以上にまで引き上げることができる技術を開発した(ニュースリリース)。
従来の単接合太陽電池の変換効率の理論限界は30%程度であり,入射する太陽光エネルギーの大半が太陽電池セルに吸収されずに透過するか,あるいは光子の余剰エネルギーが熱になるなどして利用されていない。
このような大きな損失を抑制して変換効率限界を引き上げることができる様々な太陽電池セル構造の提案・実証が世界中で精力的に行なわれている。現在のワールドレコードは4接合太陽電池で46%。太陽電池の変換効率が50%を超えると発電コストは大幅に下がり,2030年にわが国が目標とする発電コスト7円/kWhが実現できる。
今回,大きな透過損失を効果的に抑制するため,異なるバンドギャップの半導体からなるヘテロ界面を利用した太陽電池を透過するエネルギーの小さな2つの光子を用い,光電流を生成する新しい太陽電池セル構造を開発した。
変換効率が最大で63%となる理論予測結果を示すとともに,この太陽電池セルのユニークなメカニズムである2光子によるアップコンバージョン(エネルギー昇圧)の実験実証に成功した。実証された損失抑制効果は,これまでの中間バンドを利用した方法に比べて100倍以上にも達しており,その有効性が明らかになった。
今後,最適な材料を利用した太陽電池セル構造の設計を進め,変換効率に係る性能評価を進めることで,発電コストを大幅に引き下げることができる新しい超高効率太陽電池としての応用が期待されるとしている。