矢野経済研究所は,量子ドット(Quantum Dots)ディスプレー部材メーカー,QDディスプレーメーカー,TVメーカーなどを対象として,量子ドットディスプレー部材世界市場の調査を実施した(ニュースリリース)。
量子ドット(QD)ディスプレーは,LCDディスプレイのバックライト部材にQDシートを加えることで,従来のLCDディスプレーより少ないエネルギー消費量で高輝度・高色再現性を実現する。一方で材料価格が高価であること,QD粒子にカドミウムが含まれることなどがネックとなり,同調査によると,これまでQDディスプレーの量産に踏み切ったのは韓国のディスプレイメーカー1社にとどまっている。
また,2016年のQD材料世界出荷数量は30t,QDシート用バリアフィルム世界出荷数量は640万㎡(いずれもメーカー出荷ベース)であったとする。
今後,中国の複数のTVメーカーがQDディスプレーを採用したテレビの量産を開始する予定であり,QDディスプレー部材市場も大きく伸長する見通しだとしている。2017年におけるQD材料世界出荷数量は前年比256.7%の77t,QDシート用バリアフィルム世界出荷数量は前年比250.0%の1,600万㎡(いずれもメーカー出荷ベース)に拡大すると予測する。
QDシート用バリアフィルムは,2016年前半まではシリカや窒化ケイ素といった無機材料をスパッタリングで多層積層したタイプが主流であったが,コストダウンが強く求められたことから,透明蒸着フィルムとPETフィルムとをラミネートしたタイプの採用が開始されているという。
同社は今後,4K,8Kなどの高画質放送の配信が開始されれば,より画像品位の高いTVが求められ,ボリュームゾーン機種でもQDディスプレーへと切り替わる余地は十分にあると見る。大画面,高輝度,高色再現性,省エネルギーはTVの永遠の開発テーマであり,これらを実現するディスプレー部材として訴求できれば,QD TVがスタンダードを目指すことは十分可能であるとしている。