積水化学工業は,室温プロセスによるフィルム型色素増感太陽電池の生産プロセスにおいて,ロール・ツー・ロール(RTR)量産技術を世界で初めて完成させるとともに,パイロット生産機を同社つくば事業所に導入した(ニュースリリース)。
色素増感太陽電池(DSC)は,二酸化チタンなどの酸化物半導体層に色素を吸着し光電変換層として利用する有機太陽電池の一種。結晶シリコン太陽電池と同様にガラス基板上に半導体層を形成したガラス板形状のものが主流で,その半導体層の形成には,通常約500℃での焼成が必要となる。
同社は,プラスチックフィルムを基板としたフィルム型色素増感太陽電池の開発を完了するとともに,室温下で電極形成工程からサブモジュール組立工程までを連続して行なうことができる生産性の高いロール・ツー・ロール量産技術を完成させ,2万㎡/年の生産能力を有するパイロット生産機を導入した。
製造工程は,フィルム表面に光電変換層として二酸化チタン多孔膜を形成する電極形成工程,二酸化チタン多孔膜に色素を付加する染色工程,電解質を塗布し別のフィルムと重ね合わせ封止するなどのサブモジュール組立工程の3つで構成され,変換効率10%程度のフィルム型色素増感太陽電池を生産する。
フィルム型色素増感太陽電池の特長は,「低照度でも発電(照度500ルクス以下)」「薄い(1㎜以下)」「軽い(ガラスの1/10以下)」「曲がる」「貼れる」の5つで,これらの特長から,従来太陽電池が設置できなかった場所への適用が可能となる。
同社はIoTセンサー向けの独立電源としてパートナー企業との連携を進め,2017年度に発売する。将来的には,2025年度に売上高100億円規模に事業を拡大させたいとし,既にフィルム型色素増感太陽電池を活用したセンサーをスマートセキュリティーのSecualと共同開発することを表明している。